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第127回 携帯電話|あぁ、だから一人はいやなんだ。|いとうあさこ - gentosha.jp

先日、名古屋での収録がございまして。あまりないのですがなんと近所の仲良し・大久保佳代子嬢もご一緒。なので私の車で大久保さんを迎えに行ってから品川駅に向かう事に。近況報告なんか喋っていたらあっと言う間に駅到着。いつもの駅近くの機械式駐車場に車をイン。係りのおじ様が「お忘れ物はありませんか?」「大丈夫です。」いつもの会話。

 

駐車券を 受け取り駅へ向かいました。駅までの道中ではちょうど刑事ドラマの撮影をしていて「うちら映ったかなぁ?」なんてちょいと興奮しながら改札口へ。お財布に入れておいた新幹線チケットを出そうとしたところ、何かが足りない感覚。なんだ? ん? えっとぉ……あ。携帯 だ。車の中に携帯忘れた。全然“大丈夫です”じゃないじゃない。

「取りに戻る?」と大久保さん。正直時間的にはまだ余裕だったのですが、また隣のビルまで行って車を一度出しても らって、なんて考えるともういいかな、と。まるでものすごい決意をしたかのように「このまま名古屋行きます。」たかだか半日携帯なしで過ごすだけなんですけどね。

こうして乗り込んだ新幹線。すぐにどれだけ携帯に頼って生きているか思い知らされる。「発車まであと何分かな?」時間を確認しようとしたら、わからない。そうです。私はいつも携帯で時間を見ていたのです。しかもこういう時に限ってホームと逆側の座席だから時計が見えない。そして次の駅・新横浜から乗ってくるマネージャーにいつもする“無事に乗りました”の確認メールも送れない。

昔、家電(いえでん)時代は電話番号をめちゃくちゃ覚えていたから、何かあれば町の公衆電話から用件を伝える事が出来た。でも今やホームに降りても公衆 電話はなかなかないし、そもそも電話番号も覚えていない。「寝坊したと思ってないかな」「新横浜で私の席まで見に来てくれちゃったら悪いな」となんかソワソワ。結果、マネージャーは来なかったんですが、名古屋で合流した時に聞いたら「大久保さんと話しているのかなと思って」と。なるほど。

そしていつも車内でちょっと寝る時に乗り過ごさないようかけるアラームも携帯。「着く前に起こして」とどこに座っているかわからないマネージャーや離れた席にいる大久保さんに頼むのもちょっと。出した答えは、寝ない。こうなったら外の風景なんか眺めちゃって。 富士山見えたらテンション上がっちゃって。すごい綺麗だったから写真なんか撮っちゃっ て……あ、携帯ないからダメだ。じゃあやりかけのゲームでも……これも無理だ。

すると急にお腹がチクチク痛み出す。トイレに行きたいけど名古屋まであとどれくらい時間があるかわからない。だって時計ないから。じゃあ今自分がどの辺にいるか地図アプリで…… あたしゃ学習能力ゼロか。何度も携帯がない事で打ちのめされる。お腹の痛みは刻一刻と増 していく。なんとか時を知ろうとものすごいスピードで流れゆく外の景色に目を凝らす。学校、ショッピングモール、運動場、通り過ぎる駅のホーム。時計がありそうなあらゆる場所 で探す。ああ、こんなにも動体視力を研ぎ澄ました事があったでしょうか。でも時計を発見 する事は出来ず。ならば“○○店”“○○小学校”など文字から場所を知ろうとしましたが、それも見当たらず。残念無念。 まあでも富士山通過してからだいぶ経つし、そんな時間かからず名古屋に着くに違いない。

私は人間には“別の事を考えて排泄欲を散らす”能力が備わっていると思っている。もちろん それも 1,2 回使ったらごまかしの効かない“脂汗地獄”が待っておりますが。まだ一回目。 やってみよう。外を眺めながら、今はなき(車の中にはありますが)携帯の事を考えた。今自分がどれだけ携帯の世話になっているか。私はまだまだ怖くて、先日やっと nanaco をインストールしたくらいですが、今や電子マネーは当たり前になりつつあります。Suica も充電切れとかやっぱり怖くて私はまだカード派ですが、これまた携帯に入れてらっしゃる方も多いですよね。それこそ新幹線なんかもはや切符無しで、携帯ピッで改札通れちゃう。

そんなわけで私はお金系をあまり使っておりませんが、先ほど申しました時計、カメラ、ゲーム、地図。そしてもちろんメールも。調べ物もするし、思いついた事をパッとメモしたり。 radiko でラジオも聞くし、音楽や映画もいっぱい見聞きする。

あれは 20 代半ば過ぎだったかな。一番最初、iMacブームに乗っかったオレンジ色でスケルトンの PHS を手にしてからかれこれ 20 年以上。ピッチから携帯に変わり、折りたたみタイプやスライド式のを使った時はなんかすごく“未来”な感じがしてドキドキした。単色だった画面もいつしかカラーに。着メロも単音から和音になり、更には自分で番号入力して作ったりもした。今みたいに普通に音楽が流れるようになるなんて思いもしなかった。落として壊した事もあったし、ゲームセンターでカーレースのゲームをやっている時に携帯ごと鞄を盗まれた事もあった。

自分が落ち込んでいる時、ちょうど電話をくれた男友達とそのまま付き合う事になった、なんてかわいい事もありました。携帯との思い出が走馬灯のように駆け巡る。えらくお世話になってきたんだなぁ。

そうこうしているうちに名古屋到着。腹痛もなんとか耐えられました。 収録を終え東京に戻るまでの約 7 時間携帯無し生活。帰りは慣れたもんでゆっくり外を眺 めて夕暮れの富士山を心のシャッター切って目に焼き付ける、なんてしちゃったりなんかしちゃったりして。うん、たまには携帯ないのもなんかいいな。なんて言いながら東京着いて携帯手にしたら、まためちゃくちゃいじり倒しましたけどね。

あ、そうだ。こういう話のよくあるオチ“誰からもメール、来てませんでした”も書き添えておきましょか。何はともあ れ携帯よ、ありがとう。

【本日の乾杯】
先日高知に行った際、立ち寄った居酒屋さんにて。皆さん、オムライスで一杯飲んでいた。普段そんなに穀類で飲む事ないのですが、あまりに美味しそうに召し上がってるので便乗。あらやだ、良すぎ。よく炒めたケチャップライスの旨味の凄さよ。ああ、また食べたいなぁ。

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March 15, 2020 at 04:01AM
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