突然の休校から２週間。卒業式の日の朝を迎えた。６年生の息子は、気慣れぬスーツ姿で登校した。
式は在校生、来賓なし、保護者２人まで、また時間も短縮し体育館の窓は開け、行われた。全員マスク着用のもと、静かに式は進行した。
１人ずつの卒業証書授与も終わり、卒業生が退場するとき、先生方が急いで、出口の方へ移動された。
何事かと思っていると、突然、大きな太鼓の音が鳴り響いた。振り向くと、全ての先生がリコーダーや木琴、アコーディオンなどの楽器を手に、ずらりと並んでいる。そして合奏が始まった。
曲は最後の運動会で使った思い出の曲だ。上の兄弟のときは、ＢＧＭを流して退場していたのを覚えている。それが今年は急遽（きゅうきょ）、先生方がこの限られた短い式のなかで、何か子供たちの心に届くものをと考え実行してくださったのだ。
休校の対応に追われ、非日常的な忙しい日が続くなか、練習をしてくださっていたのだ。その力いっぱいの合奏に背中を押されるように、どの子供も堂々と前を見、胸を張って退場していった。
全員退場した後も、体育館の中はいつまでも大きな拍手と、窓から入るやわらかな春暖の風に包まれていた。
ハンカチをかばんにしまい、最後にいただいた最高の贈り物を胸に、子供も親も小学校の門を後にした。
樋口千秋（４４） 大阪府岸和田市
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May 05, 2020 at 03:00AM
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