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小松政夫さんが語った半生《復刻連載「こそーっと聞いちゃり」3・4》 - 西日本新聞

 《今からちょうど20年前。2000年11月~12月に西日本新聞朝刊に掲載された小松政夫さんの聞き書き連載「こそーっと聞いちゃり」(30回)を期間限定で公開します。文中の年齢、肩書、名称などの情報はすべて掲載当時のものです。小松さんのご冥福をお祈り致します》

こそーっと聞いちゃり<3>付き人に

 「それじゃあ、明日いでも植木さんご本人に面接してもらいましょうか」

 なべさんな気やーす言わっしゃったばってん、会社勤めの身でしょうが、何もかも放たくり投げるごとして会社ば辞むるわけにゃあ、いかんです。区切りのよかごと、翌年の一月からにしてもろうたとですたい。

 なして、四百人を超える応募者からあたしが選ばれたか、よう分からんかったばってん、植木等さんが車の運転のでける、まじめな者を希望しとんしゃったごとあるですね。まじめ、ていうのは芸能界ずれしないくらいの意味でしょう。

 実はね、俳優、それもコメディアンになろうと思うて、俳優座養成所の試験を受けたこともあったとですよ。それは、後で話すとして、「そういやあ、役者ンなるため東京に出てきたんやなあ」て、こそうっと期するとこもありましたたい。

 植木さんは面接の後「おぅ、運転してくれ」って運転席ばあたしに譲って、それが、ま、会社で言うと入社式のごたるもんでしたね。それが昭和三十九年の一月、あたしの誕生日が十日やから、その四、五日前でっしょう。会社と違うとるとは、社長とヒラの二人だけちゅうことでしょうね。

 付き人ちゃ、何ばするとですかってですか。平たく言うと、身の回りの世話でっしょうばってん、あたしも何ばするとか、はなはいっちょん分からんやった。ただ、植木さんの役に立とう、それだけで付いとったとですたい。

 朝七時にゃ起きて植木さんのお宅に迎えに行く。「おぅ、おはよさん。飯、食ったか」。「いえ、まだです」て言うと「食え、食え」と、よう朝ご飯ばご相伴しました。
 たあだ、ご相伴したわけじゃなかとですよ。今日のシャケなちいっと辛かな。のどの渇くごとある。おやじさんもきっと、のどの渇いとろうや。そう思うたら、楽屋に着いたときとか、車を降りんしゃった後にさっと水ば出す。「おっ、ありがとさん。何か飲みたかったとこだったよ」。そげん一言ば聞きたかばっかしに、体ば動かしたですたい。

 楽屋で植木さんが寝とらっしゃあでしょ。寝入ったなと思うころドアばちょこっとだけ開けとく。で、廊下に正座して、ときどき様子ばのぞく。起きんしゃったら「目が覚めたですか」と入るし、時間がきても起きらっしゃれんときは、小声で起こします。いきなりおらぶと、だれでん嫌ですもんね。

 (聞き手 竹原元凱)

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December 12, 2020 at 10:00AM
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