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敬老の日 「役割」と「自立」実感が鍵 - 日本農業新聞

 世界トップクラスの長寿国を誇る日本だが、高齢者を取り巻く状況は厳しい。新型コロナウイルスの影響に加え、少子化に歯止めがかからず社会保障制度の持続性が危ぶまれる。高齢者の健康と尊厳を守り、安心して老いることができる社会をどう築くか。「敬老の日」に考えたい。

 厚生労働省によると、2021年の日本人の平均寿命は女性が87・57歳、男性が81・47歳で、女性は世界1位、男性は3位となった。ただし、前年比で見ると女性は0・14歳、男性は0・09歳縮んだ。前年を下回ったのは東日本大震災時の11年以来で、新型コロナの影響とみられる。

 感染予防対策も心身に負担をかけている。密を避けるため外出や人との交流を減らし、自宅や施設にこもることで身体・認知機能の低下を招く。広島大などの研究グループの調査によると、コロナ禍に伴う活動制限で認知症の入所者に理解力や判断力など認知機能の低下がみられたと回答した施設は21年は8割に達し、20年を上回った。

 社会保障の財源不足も課題だ。一定程度の所得がある高齢者が、介護保険サービスを利用した際の自己負担額は1割から2、3割となり、10月からは医療費が2割に引き上がる。利用・受診控えが症状を悪化させないか心配だ。

 こうした状況を乗り切るには、健康維持への働きかけと心身機能が低下した時に支える仕組みを強化する必要がある。高齢者が自身の「役割」や「自立」を実感し、生きがいを得ることが鍵となる。

 福祉という観点から、農作業の場を提供する方法もある。農水省が20~21年度に茨城県の後期高齢者を対象に調査したところ、農業者は、農業をしていない人に比べて1人当たりの年間医療費が約2割、介護費は約8割低いことが分かった。体力づくりに加え、作物の世話をする使命感や収穫の達成感、作物を人にあげて喜ばれる満足感などを通して自分の「役割」を感じ、自信とやりがいが生まれ、心身の健康につながっている可能性がある。

 加齢で低下しがちな心身機能も、活用できる機能を生かすことで悪化を防げる。認知症になっても状態はさまざまで、農作業や料理など慣れた仕事はこなせる場合もある。できる機能に着目し、「自立」を手助けするケアが症状の進行を遅らせ、当人の尊厳を守る。JAは、認知症への理解を深めた「サポーター」を約20万人育成している。一層の広がりを期待したい。

 第29回JA全国大会では高齢者が元気で生きがいを持ち、安心して暮らせる地域づくりを掲げる。団塊の世代が75歳以上となり、超高齢社会となる25年は目前だ。取り組みを加速しよう。

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