つながる鍵は「マインクラフト」専門学校生が小学生と長野市中心部の将来考える｜信濃毎日新聞デジタル信州・長野 ... - 信濃毎日新聞デジタル

　「長野市をもっと大好きになれる街にしよう」。長野市の専門学校「岡学園トータルデザインアカデミー」の学生たちが１１月２７日、同市山王小学校を訪れ、児童と一緒にＪＲ長野駅周辺の街づくりを考えた。そこで活用したのが、仮想の建物や街をつくるゲーム「マインクラフト（マイクラ）」。子どもたちにおなじみのゲーム画面を見せながら、学生たちが進めた授業を取材した。

■長野駅善光寺口周辺をゲーム内に。「街並み再現、簡単ではなく」

　岡学園の学生たち４人はこの日、山王小６年生（４１人）の総合学習で授業を担当。長野駅前の画像をスクリーンに映し出した。画像をよく見ると、建物だけでなく、空に浮かぶ雲までも角張っている。雲も建物もブロックの形でできたマイクラの仮想空間だ。

　マイクラのブロックには木や石、粘土、ガラスなどさまざまな素材、色があり、組み合わせて仮想の建物や街をつくることができる。遊び方に決まりはなく、建物を建てたり、モンスターを倒したりと自由にやりたいことを楽しめるのが特徴だ。

　学生たちは今回、長野駅善光寺口北側の半径約１５０メートルの範囲で再現を試みた。仮想空間は７月下旬に作り始めたものの、ブロックを一つずつ積み上げて街並みを再現するのは簡単ではない。完成し、授業で披露できたのは、全体の４～５割ほどだった。

　街づくりを考えてもらうのなら、単に駅前の写真を撮ればよさそうなものだが、学生たちは「子どもに身近なマイクラを使ってこそ、興味を持ってもらえるはず」とこだわった。建物と道路を別々の人が作ったため平行にならず、建物を解体して作り直したこともあった。学生たちは「何度もやめたいと思った」と振り返る。

■足湯やジェットコースター…さまざまな小学生の理想の駅前像

　授業の当日、駅ビルやロータリーなどを再現した画像が映し出されると、子どもたちからは「すごい」と声が上がった。山王小は長野駅から５００メートルほどの場所にある。岡学園２年の梅田高取さん（１９）は授業で、進学や就職で地元を離れた若者が、その後も戻らない現状があると説明。「みんなの意見をどんどん反映させ、もっと大好きになれる長野市をつくりましょう」と呼びかけた。

　子どもたちは４、５人ずつの班に分かれ、アイデアを出し合った。ファストフード店、音楽やゲーム関係の店の名前が上がる一方、足湯やインスタ映えするスポットなどのアイデアも出た。

　子どもたちはその後、駅前が空白となった用紙に理想の駅前像を思い思いに描いた。大きな跳躍器具やジェットコースター、プールなどを整備したいと考えた山口隼矢さん（１２）は、長野にしかないものや、また来てみたいと思わせる場所が少ないとし、「自分の街を自慢したくなるものがあれば愛着を持てる」と話した。

　子どもたちのアイデアを基に学生たちは「２０４５年の駅前」をマイクラで作る計画だ。完成した仮想空間は山王小の児童に披露するほか、来年２月に長野市内で開く岡学園の学生制作展にも出展。来場者に地域の将来や街づくりを考えてほしいとしている。

■近隣地域に大型店計画、活性化には観光客にも目を

　梅田さんは岡学園の長野プロデュース科２年生。同科は地域活性化を学ぶ目的で２０１７年に発足し、学生たちは学校近くの南石堂町商店街と連携して商店街活性化に取り組んでいる。本年度は店頭ポスターを作ったり、商店街の夏祭りの企画を提案したりした。近隣地域で大型店の開店が進む中、学生たちは長野市中心市街地の今後について考えを深めている。

　白馬高校（北安曇郡白馬村）で観光を学んでいた梅田さんは、外部からの訪問者を増やすことに着目。長野駅周辺にホテルや飲食店はあるが、観光客が訪れたくなる魅力的な場所があるだろうかと問題意識を抱いている。駅周辺の魅力が高まれば、観光客も増えて街に活気が生まれ、地元を離れる若者を減らすことにもつながると考える。

　岡学園のグラフィックデザインコース２年の滝沢迪朗（みちろう）さん（１９）は、長野市の中央通り沿いにある老舗家具店が実家。家業を継ぐことを考えており、店主の父とは街づくりのアイデアをよく語り合うという。「長野市には善光寺があるが、『それ以外は？』と聞かれると答えに困る時がある」と滝沢さん。「人口減少が進む中でも長野市が発展し続けるには、住民のことも観光客のことも考えた街づくりが必要だ」と話している。

（読者センター・西川大照）

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