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【連載小説 第25回】新堂冬樹『動物警察24時』ミニチュアシュナウザーの虐待疑惑!?(本がすき。) - Yahoo!ニュース

いかなる理由があろうとも「動物虐待」など許さない!
そんな人の心がひとつの組織となった。
動物を身を張って守る、それがTAP--東京アニマルポリスなのだ。

 俺も、宮益坂上に移動します
 現金を渡したら車種を教えてください
 涼太と天野から、立て続けに返信がきた。
 それぞれ了解! 細心の注意を払ってね
 璃々は、一斉送信で二人に返した。
「やっぱり、尾行は危険じゃないでしょうか?」
 遠慮がちに、智美が伺いを立ててきた。
「尾行しないほうが危険です。現金の確認のあとに、ミルクちゃんの場所を連絡してくるという保証はありませんからね」
「でも……」
「任せてください」
 不安がる智美に、璃々は拳(こぶし)を作って見せた。

                   ☆

 黒のアルファード、白のエルグランド、白のハイエース、濃紺のベンツ、赤のファミリア、白のハイエース、白のプリウス、黒のレクサスの四駆……宮益坂下から上ってくる車に注意を払ったが、どれも後部座席のドアは開いていなかった。
 なにより、スローダウンする車がいなかった。
 スマートフォンのデジタル時計は、24:15を表示していた。
 約束の時間を五分過ぎても、後部座席のドアが開いている車は現れなかった。
「どうしたんでしょうか? もしかして、張り込みがバレたとか……」
 智美が、不安げな顔を向けた。
「きっと、現れます」
 璃々は己に言い聞かせるように、断言した。
 不安なのは、璃々も同じだった。
 一分、二分、三分……デジタル時計の数字が増えるたびに、焦燥感に拍車がかかった。
 犯人はまだですか?
 現れましたか?
 零時二十分になったときに、宮益坂上で璃々からの無線を待っている二人から立て続けにLINEが入った。
 まだよ

 璃々は二人に返信し、坂下に祈るような視線を向けた。
 残酷にも、時間はどんどん過ぎてゆく。
 零時三十分になったときに、メールの通知音が鳴った。
 璃々のスマートフォンはバレないようにバイブレーターにしているので、鳴っているのは智美が渡された犯人専用のものだった。
「犯人からですか?」
 嫌な予感に導かれるように、璃々は訊ねた。
 無言で頷く智美は強張った顔で、ディスプレイに視線を落としていた。
「ちょっといいですか?」
 璃々は智美の手からスマートフォンを受け取った。

 受け取り方法を変えます。いまから二時間後の午前二時三十分、道玄坂上を右に曲がるとすぐに「レジデンス道玄坂」という雑居ビルがあります。エントランスを入ったら次の指示を出しますから、メールしてください。

「きっと、バレたんです……ミルクが……ミルクが……」
 智美は、泣き出しそうな顔で取り乱した。
「まだ、そう決まったわけではありません」
 気休めを言ったつもりはないが、璃々の危惧の念が増したのも事実だ。
「じゃあ、なんで場所を変えるんですか!?」
 珍しく、智美が食い下がった。
 無理もない。
 昨日と同じように張り込みの存在がバレたら、ミルクの命は保証できないと犯人サイドに宣言されているのだ。
「張り込みを警戒して、最初からそのつもりだったのかもしれません」
 智美を安心させるためだけでなく、璃々はその可能性も十分に考えられると思っていた。
「それだったらいいんですけど……」
「バレているとしたら、昨日と同じようにすぐにメールに書いてあるはずです。わざわざ、場所を移動させる意味がありませんからね」
「たしかに……そうですよね。バレてないから、メールになにも書いてなかったんですよね!」
 暗鬱としていた智美の顔が、パッと明るくなった。
「そうですよ! 仕切り直しです!」
 璃々は明るく言いながら、LINEのメッセージの文面を打った。

 受け取り場所の変更指示がきたわ。二十六時三十分、道玄坂上の「レジデンス道玄坂」。ビルのエントランスに着いたらメールしろって。犯人は警戒して受け取り場所を変えた可能性があるから、二人は道玄坂下の「ユニクロ」あたりで待機してて。
 また、状況連絡するから。

「さ、移動しましょう」
 璃々は、涼太と天野に一斉送信すると智美を促した。

                 ☆

「レジデンス道玄坂」は、一階にコンビニエンスストアの入った十階建ての雑居ビルだった。
 エントランスは、玉川通り沿いではなく路地に入ったほうにあった。
 途中、ファミリーレストランで一時間ほど時間を潰した。
 璃々は、智美の気を紛らわせるために敢(あ)えてドラマや映画の話をした。
 西宮翔の出演作を熱っぽく語っているときだけ、智美の表情が明るくなった。
 つい最近まで、愛犬虐待の容疑者だった男が虐待事件の被害者の心を救うとは皮肉なものだ。
「まだ十五分ありますから、座って待ちましょう」
 エントランスには、待合ベンチが設置してあった。
 犯人に到着を告げるメールは、智美が一、二分前に送っていた。
「ここは、犯人に関係のあるビルなんでしょうか?」
 ソファに腰を下ろした智美が、周囲に首を巡らせつつ訊ねてきた。

新堂冬樹(しんどう・ふゆき)

金融会社を経て、「血塗られた神話」で第7回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。
『無間地獄』『闇の貴族』『カリスマ』『悪の華』『聖殺人者』など著書多数。近著に『極限の婚約者たち』『カリスマvs.溝鼠 悪の頂上対決』など

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February 28, 2020 at 02:01PM
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