Search

【朝晴れエッセー】お月さん・3月1日 - 産経ニュース

 私の妻は3年前に亡くなった。

 遠距離(大阪と長崎)だった私たちは、月に2回ずつ文通をし愛を実らせた。今のように携帯電話はなく、夜8時を過ぎると電話料金が安くなるので、8時を待って電話デートをしていた。

 そして終わりかけに彼女は今夜は月がきれいだから、電話を切ったらすぐにお月さんを見ようねと言う。満月の夜も三日月の夜もあった。私は電話を切ったらすぐにベランダに飛び出して月を見上げた。

 その時によってはベランダから見えない日もあり、外に出て月を探した。ああ今、彼女と同じ月を見ているのだと思うと彼女と繋(つな)がっている幸福があった。彼女はいつの日か一緒に月を見たいねとよく言っていた。

 そして私たちは結ばれた。4人の子供を授かり、子育て中も彼女は月のきれいな夜は私をベランダに誘い、夜空を見上げた。彼女は私と結婚したら一緒に月を見るのが、夢の一つだったので、私は嫌な顔をせずにいつもつき合った。

 私の安月給で4人の子育てをし私の母と7人家族をよく守ってくれた。彼女自身も8回も脳腫瘍の手術を受けてもいつも平然としていた。贅沢(ぜいたく)なことは一つも言わず小さな幸福を大きな幸福に変える名人だった。

 彼女が死んだ後、子供たちが思い出したように「お父さん、お母さんとよくベランダで月を見ていたね」と言ってくれる。一人暮らしの今は月のきれいな夜は、彼女の写真を持ってベランダで独り言を言いながら月を見ている。

石原 弘 73 堺市北区

Let's block ads! (Why?)



"朝" - Google ニュース
March 01, 2020 at 03:00AM
https://ift.tt/2I3uXjo

【朝晴れエッセー】お月さん・3月1日 - 産経ニュース
"朝" - Google ニュース
https://ift.tt/2vfz5JY
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "【朝晴れエッセー】お月さん・3月1日 - 産経ニュース"

Post a Comment

Powered by Blogger.