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積水ハウス内紛で前会長が反攻、三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】 - ASCII.jp

大手住宅メーカーである積水ハウスの和田勇前会長兼CEO(最高経営責任者)らは2月中旬、同社の経営陣刷新を求める株主提案を行った。同社では「地面師」と呼ばれる地主になりすます詐欺師に約55億円をだまし取られたことが2017年に発覚。その責任を巡って和田氏と阿部俊則会長(当時社長)が対立して互いを解任させようとする事態になり、18年に和田氏が阿部一派の手によって辞任へ追い込まれた。“クーデター”から2年を経て、和田氏は自身を含む11人の取締役候補の一括選任を4月の定時株主総会で求める。和田氏に加え、株主提案側の取締役候補に名を連ねた勝呂文康取締役専務執行役員(現職)、マネーロンダリングに詳しいクリストファー・ダグラス・ブレディ氏とESGの専門家であるパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏がダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた。インタビューを通じて、彼らは積水ハウスへの株主提案書だけではなく、地面師事件に関連して三菱UFJ銀行にも書簡を送っていることが分かった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、重石岳史)

地面師事件後のクーデター
オリンパス事件に似ている

――株主提案通りに取締役の全面入れ替えができた場合、阿部俊則会長(当時社長)らが取引の当事者だった地面師事件を調べ直すと宣言しています。阿部氏らを刑事告訴するつもりがあるということですか。

和田氏 会社は地面師だけを訴えています。積水ハウスは被害者だから何が悪いのと思われるかもしれないが、この事件はもっと真相を追求しないといけない。だから、第三者委員会をもう一度立ち上げます。

 警察も動きようがないですよね、会社から(地面師を訴える以外の)被害届が出ないと。刑事事件になるかどうかは、調べてみないと分からないですよ。

わだ・いさみ/1941年和歌山県生まれ。関西学院大学卒業後、積水ハウスに入社。営業力に長け、98年に社長就任以降20年にわたって名物経営者として鳴らしてきた。2008年に会長兼CEOになって以降は、海外事業を主導。地面師事件に絡んで阿部俊則社長(当時)らと対立し、18年に事実上の解任となった Photo by Toshiaki Usami

(編集部注:株主提案では、偽の所有者と土地の売買契約を結び約55億円を騙し取られた地面師事件での「不正取引」、事件発覚後に作成された調査報告書の開示を拒む「重要情報の隠蔽」、不正取引の責任から解職すべきとの判断を無視して会社を支配する「ガバナンス不全」を理由に、阿部俊則会長、稲垣士郎副会長、仲井嘉浩社長、内田隆副社長を中心とした現経営陣は不適任であるとした。なお、上記の代表取締役4人は株主代表訴訟で善管注意義務違反に問われている)

――積水ハウス側に、単純なミスとは思えない見逃しの連鎖が起きたんですよね?

和田氏 (社外役員からなる調査対策委員会が2018年に出した)「調査報告書」は読んだ?

――読みました。地面師グループに預金小切手で代金を支払ったこと、売買決済の前に本物の所有者から内容証明が何回も届いて警告が発せられていたのにこれをスルーしていたことなどが判明し、被害金は裏社会に流れたと推定されるとありました。また、阿部氏の重い責任を指摘していました。

和田氏 誰が読んでもおかしいでしょう?こんなのを読んだら、(阿部会長は)被害者じゃないでしょう?加害者とは言わないが、それに近いよね。だから私は「不正取引」だと言っている。

――少なくとも、内容証明が届けば、法務部門が一度ストップをかけて本人確認を再度やるものではないですか。

和田氏 普通はね。ありえない話。

 社長案件になっていたからでしょうね。10回くらい信号でストップかかっているのに平気で乗り越えて、赤信号でもどんどん入ってしまった。

――当時、東京・五反田の土地を売るというのは詐欺話だと、他の同業者は気づいていたと聞きます。

和田氏 先に話が持ち込まれた大和ハウスは断り、その後にうちがすぐ飛びついたらしいです。

――国内事業は阿部氏、海外事業が和田さんの担当だったとはいえ、CEOだった和田さんの睨みはきかなかったんですか。

和田氏 私が全く知らないうちにやっていた。ある面でガバナンスが効いていなかったということです。

――そこは自らが反省すべきところ?

和田氏 反省するところ。社内に100億円以下のものは取締役会を通さなくてもいいというルールがあったので、暗黙のうちに進んでしまったんだと思います。

――発覚してからは、和田会長は阿部会長を問い詰めたんですか。

和田氏 やったから、(事実上の解任というかたちで)梯子を外されたんですよ。私は委員会を立ち上げてこの事件の問題を調査し、調査結果を世の中に発表するように言いました。

 罪が恐くて、隠し通そうとしたんでしょう。

ブレディ氏 現経営陣は、(株主代表訴訟を受け)裁判所から調査報告書を提出するよう命令されても抵抗しました。

クリストファー・ダグラス・ブレディ/1954年生まれ。米チャート・グループ会長兼CEO。安全保障、リスクマネジメント、マネーロンダリング防止に経験と知見を持つ。ジョージ・ブッシュ大統領のニュージャージー州選挙責任者などの経歴を持ち、米国政府に近い人物。和田氏とはかねての知り合い Photo by T.U.

 この件は、かつてオリンパスで起こったこと(巨額損失隠し事件)とよく似ていて、米国でも注目されています。警告を出した者が結局、追い出されてしまう。取締役会に独立性がないと、こうしたことが起こってしまうんですよ。

地面師事件にマネロンの兆候
三菱UFJに質問の書簡を送った

――地面師グループの主犯格が捕まって、騙されたカネは特別損失計上され、積水ハウスの問題としてはもう過ぎたものという認識が日本では一般的なようにも思います。米国の投資家や専門家などは、この問題をまだ気にしているんでしょうか。

ジェイコブズ氏 コーポレートガバナンスは今、世界的に最も重要な問題となってきています。多くの企業が適正な基準でもって仕事をし、パフォーマンスを出していくことが期待されている。テロにもマネーロンダリングにも関与してはならず、そうした問題は米国では非常に大きなレッドフラッグになります。

パメラ・フェネル・ジェイコブズ/1960年生まれ。米スパウティング・ロック・アセット・マネジメントのチーフ・サステナビリティ・オフィサー。ESG(環境・社会・ガバナンス)の専門家で、上場企業に対してESG目標を重視させる活動に従事。コンサルティング、講演活動などを行っている Photo by T.U.

――マネロン問題に詳しいブレディさんは2月17日に開かれた株主提案側の会見で、この事件はマネロンの兆候が見られ、この件に関して米国の情報機関と動いていると言及しました。

(編集部注:高額な不動産取引は銀行振り込みが一般的だが、この事件では預金小切手で代金が支払われた。小切手はカネの流れの記録が残りにくいため、マネロンに利用されやすい)

ブレディ氏 当時は内部にいなかったので、調査を手伝うことはできませんでした。いれば、もっと簡単だったんですけど。

――ブレディさんは、小切手を現金化した三菱UFJ銀行にも問題があると指摘しています。この件で三菱UFJとすでに話はしているのですか。

ブレディ氏 質問するための書簡を書きました。

――いつ送りましたか。

ブレディ氏 1月9日。

――返事は?

ブレディ氏 まだです。三菱UFJは良い銀行だと思いますし、積水ハウスとも良い関係を持ってきました。今後私たちが取締役になったときも協力関係を維持していきたい。書簡には、私たちは銀行と協力していったい何が起こったのかつまびらかにしたいと書きました。

――調査をするとなったら、三菱UFJとも手を組みながらやっていくのがベスト?

ブレディ氏 もちろんそうです。その必要があります。

――三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見ると19年に積水ハウスの株式保有比率が増えて、8%を超える大株主になっています(19年8月時点)。ということは問題視していないんでしょうか。

ブレディ氏 分からないですけど、積水ハウスそのものはね、良い会社だと思います。

>>後編『積水ハウス議決権争奪、「ESG銘柄のガバナンス不全」に投資家動く』に続く

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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February 21, 2020 at 04:00AM
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