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とにかく食べさせる~おいしい朝ごはんで送り出す - 読売新聞

三つ子ちゃん×辻仁成 子育てエッセー第10回

(c)Nicole Lambert

-おえー

-まずそうー

ママ あなたたち本当に嫌になっちゃうわ。何を食べさせればいいっていうの?何を作っても喜ばないんだから!!

-ママ、大袈裟だよ!!ママはいっつも大袈裟なんだから!!ぼくたち、スニッカーズも、キットカットも、マーブルチョコやM&M、キンダーチョコも好きだよ!(訳・辻仁成)

開けてびっくりのお弁当が育んだもの~エッセー・辻仁成

 ぼくは息子と二人暮らしを始めた時、何を思ったのか、とにかく食べさせることだ、と思いついたのでした。とにかくおいしい朝ごはんを作って送り出し、学校から疲れて帰ってきたら、おやつを出し、それから夕食はできあいのものではなく、外食ではなく、自分で献立を考えて毎日、美味しいものを作ろうと決めたのです。それは息子が高校生になった今も続いています。

 なぜ、そんなことをはじめたのかと、当時の自分を振り返るならば、きっと言葉で説明したくなかったのではないかと思うのです。父親と二人で暮らさないとならない事情をあれこれ説明しても子供にはうざいだけだと思いました。ならば言葉に頼らず、毎日、自分の人生を振り返るようにお弁当や料理に向き合うことが、時間と労力はかかりますが、健全な家族の立て直しのための基礎になると思ったのでした。

 学校給食があるので、お弁当といっても学校で食べるものじゃないのです。朝、息子が学校に出かける前に食べる朝ごはんのことです。あえてぼくは日本のまげわっぱにご飯やおかずを詰め込んだのでした。父から子への美味しいメッセージとともに…。

 流行りのキャラ弁とかは無理ですけど、丹精込めて手塩にかけて一つ一つのおかずを作ることで、その作業の中で、息子への愛情とぼく自身にとっても人生修行のようなものを見つけることができました。

 もともと料理は好きだったので、お弁当作りそのものは苦ではありません。弁当箱にちょっとずついろいろなおかずを入れることで、満遍なく食べることの大事さも教えることができました。おかずの配置、配色などにも苦心し、見た目にも美味しいお弁当にしあげていきました。開けてびっくりのお弁当は、同時に子供の好き嫌いをなくすことへと繋がりました。苦手な野菜はハンバーグに詰め込んだり、様々な工夫を凝らしたのです。

 起きてきた息子が弁当箱の蓋をあける瞬間の、僅かに浮かぶ微笑みの光りにぼくはその頃救われていたようにも思います。

「三つ子ちゃん×辻仁成の子育てエッセー」一覧はこちら

作者プロフィル

 ニコル・ランベール(Nicole Lambert)

 1948年、パリ生まれ。美術学校を経てモデルとしてのキャリアをスタートし、その後、子供服やおもちゃのデザイナーとして働き始める。雑誌向けにイラストを描くなかで、1983年に『マダム・フィガロ』で「三つ子ちゃん(Les Triples)」の連載を開始。同作は人気を集め、世界で翻訳・販売される。日本ではフランス国外で初めて書籍化された。テレビ化もされ、近年は世代を超えて親しまれている。一男一女の母。

 辻 仁成(Tsuji Hitonari)

 1959年、東京生まれ、パリ在住。作家。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞。97年「海峡の光」で芥川賞、99年「白仏」のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。長男が小学5年生の頃から、シングルファーザーとしてパリで子育てを行う。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Webマガジン「Design Stories」主宰。

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