原作は、スウェーデンの作家ルーネル・ヨンソンによる児童文学「小さなバイキング」シリーズ。尾田栄一郎氏の人気漫画『ONE PIECE』のモチーフにもなり、半世紀にわたり世界70ヶ国以上で愛され続けている。今作は、何でも黄金に変えてしまう魔法の剣の秘密を解き明かす、原作にはないオリジナルストーリーが描かれる。
■ビッケに共感する部分とは?「承認欲求がある」
――これまでにも声のお仕事はされていますが、主人公の男の子、ビッケのアフレコはいかがでしたか?
【伊藤】声のお仕事は緊張もしますし、足を引っ張ってはいけないという感情もありますが、それ以上に今回は楽しくできました。バイキングの族長でもあるお父さんのハルバル(三宅健太)と、親友の女の子イルビ(和多田美咲)と一緒にアフレコができました。ちょっと私がワガママを言わせていただいて。絡みの多い方と一緒にアフレコができたら心強いなと思ってお願いしたんです。このご時世なので、仕切りがある状態ではありましたが、ひとりきりで録るのとは全然違いました。
――よく覚えているのはどんなシーンですか?
【伊藤】最後のほうで、お父さんとふたりで雪の中を滑っている場面があって「ヒャッホー」「イエーイ」とずっと叫んでいるんです。あれはひとりでやってたら厳しかったですね。あとは「俺たちバイキング!」と掛け声をしているシーンも、イルビと一緒に参加させていただきました。最初は私たちも言うとは思っていなかったのですが、ふたりで一緒に言えたのでテンションも上げてできてよかったです。
――ビッケに決まったときから、気持ちがわかるとお話されていました。実際にアフレコしてみてどういったメッセージをより受け取りましたか?
【伊藤】やっぱり夢がありますよね。どうしても人って、決めつけられると反発するじゃないですか。私も、末っ子なので「沙莉にはまだできない」と、普段からよく言われているんです。いまだに。ビッケと同じように、「何かで認めてほしい」という承認欲求はやっぱりありますし、共感します。でもビッケはそれだけでは終わらなくて、体が小さくて力もないから、できないことも多いのですが、知恵があって、ビッケにしかできないことがある。ビッケは反発するのではなくて「これが自分にはできないなら、ここでカバーすればいい」と考えられるんです。こんなにちっちゃいのに。それってすごくかっこいいですし、勇敢で、そういう姿を見られるのは、夢があるなと思います。
■エゴサーチは10歳から「芸歴と変わりませんね(笑)」
――ご家族からはいまだに末っ子あつかいされるとのことですが、ここ最近の伊藤さんの活躍は本当にすごくて、一般的には評価も人気もうなぎのぼりです。末っ子として「まだできない」と言われていた状態から、今現在の世間からの高い評価というのは、プレッシャーにはなりませんか?
【伊藤】なりますよ。期待していただけるのであれば、それは裏切れないですし。期待以上のことができなければ、落ちていくと思います。そう考えるとすごく怖いです。私はあまのじゃくなので、「ほめてほしい!」と思いながら、ほめられたらほめられたで、慣れていないので、どう対応していいのかわからなくなる。これから先、どうやっていこう。もっと上に行かないと!みたいなプレッシャーは確かにありますね。
――子役時代と比べて、仕事への取り組み方に変化はありますか?
【伊藤】昔は言われたことだけをやってきましたが、今は自分でも意見を言わせていただくようになりました。自分の役だけじゃなく、作品に対しても深くかかわって、自分から行くようになりました。そこは変わったかなと思います。
――自分の役だけではなく、作品がよりよくなることを考える。
【伊藤】はい。むしろ役よりも、作品がよくなることが一番です。結局作品のことを考えれば、役にも反映されますし。これからもそうやっていけたらと思います。
――周囲からの視線で変化したことはありますか?
【伊藤】人の視界に入れてもらえるようになりました。
――え? 以前は入っていなかったという意味ですか?
【伊藤】はい。同世代に華やかな子が多いこともあって、私はみんなの視界に入っていなかったんです。たとえば私と、もうひとり売れっ子の子が一緒にいたりしたら、やっぱりみんなその子を見てあいさつするんです。まあ、当然と言えば当然のことなんですけどね。今をときめいている子が隣にいたら。そうした時代も過ごしてきましたが、やっと今は人の視界に入れてもらえるようになりました。
あと年齢を重ねたことで、対等にお話できるようになれたことも変化です。意見を言えるようになりました。でもそれも自分から言い始めたというよりは、聞いてもらえるようになったから「あ、自分も言っていいんだな」というところから始まって、さっきお話した「自分ももっと作品に深く関わっていきたい」という思いが生まれていったのかもしれません。もともと受動的なタイプで、自分から歩み寄ることができないタイプなんです。扉を開けてもらえるようになったからというのはありますね。
――でもその扉も、伊藤さんの活躍があったからこそ、開いたわけですよね。そして意見が言えるようになって。いい方向へ相乗効果が働いているんですね。仕事上だけでなく、一般の方からの視線も変化しているのでは? エゴサーチ歴が長いそうですが。
【伊藤】ベテランです。エゴサーチは10歳からやっていますから。16年目です。芸歴と変わりませんね(笑)。
――最近では昔の掲示板などでの言葉だけでなく、SNSでやりとりもできます。一般の方の反応で、プラスに感じていることは?
【伊藤】良い意見にしても悪い意見にしても、最近は、知っていてくれているというのがすごくありがたいです。たとえば「嫌い」と書かれたとしても、そういう感情を抱いてくれてありがとうと思います。知られていないよりうれしい。なんなら「誰?」と書いてあったとしても、何かの記事を読んでくれたのかな、気に留めてくれたのね。ありがとうと思います。
――マイナスな意見に傷つくことは?
【伊藤】もう傷つかないです。それに関してはもう鉄ですから。
――さすが“ベテラン”ですね。最近、うれしかった言葉は?
【伊藤】「この人が出てると見ちゃう」と言われるのはうれしいですね。目指していた部分でもあるので。たとえばビッケにしても、「伊藤沙莉がやるんだ。なら見てみようかな」とか、そういうご意見を見つけたときには、「いえーい!」とうれしくなります(笑)。
■“かわいい”の声に照れ「優しいお耳と眼球の持ち主ですね」
――このところは、お芝居だけでなく、それこそ声が好きとか、かわいいと言った意見も増えているかと。
【伊藤】あ、ありがとうございます…。優しいお耳と眼球の持ち主ですね。
――(笑)。ご自身でも最近、私かわいいなとか思いませんか?
【伊藤】ええ! 思ったことないですよ! 鏡が大嫌いなんです。今でも。最近は家にいることも多くて、仕事柄鏡も見なきゃいけないのですが、全然見ないから太っちゃいました(苦笑)。ほんと見ないです。テレビを消して暗くなった瞬間に、自分の顔が映ったりすると「うわ! 最悪!」って思っちゃいます。
――えー、すてきですけど。話は変わりますが、ビッケは鼻をこするクセがあります。伊藤さんには何かクセはありますか?
【伊藤】口のなかをもごもごしちゃいます。余分な肉をかんじゃうんですよ。昔からのクセで。考えことをしているときにやっちゃいます。親いわく、気に入らないことがあるときにやっているらしいんです。「ガムを食べるな」と注意されることがあるのですが、食べてないんです。
――(苦笑)。
【伊藤】書けないかな(笑)。あとは笑うときに口に手を当てることはよくしますね。これなら大丈夫かな(笑)。
――もうひとつ。ビッケはバイキングになる夢を持っています。最近の伊藤さんは「色んな伊藤沙莉を見てほしい」と抱負を語られていますが、個人的なものでもいいので、なにか大きな夢を教えてください、
【伊藤】とんでもなくデッカイ家を建てる。伊藤ビレッジを作る。
――伊藤ビレッジ!
【伊藤】千葉に伊藤ビレッジ。野望ですね。
――そのためにはますます仕事にまい進しないといけませんね。
【伊藤】はい。貯金貯金といった感じで、日々を過ごしております。うふ。
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September 23, 2020 at 05:00AM
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伊藤沙莉、批判にも傷つかない“鉄の心”「知られてないよりうれしい」:紀伊民報AGARA - 紀伊民報
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