EV用セルの内製化を発表するテスラのマスクCEO(右)(22日、同社の中継画面から)
【シリコンバレー=白石武志】米電気自動車(EV)メーカーのテスラは22日、車載電池の基幹部品であるセルを自社生産すると発表した。設計や素材、生産プロセスを抜本的に見直し、容量当たりの生産コストを現在の半分以下に引き下げる。3年後をメドにガソリンエンジン車を下回る2万5000ドル(約260万円)のEVを発売する考えも示した。
22日にカリフォルニア州の工場で開いた電池事業の説明会でイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が明らかにした。すでに自前の設備で従来よりも大型の円筒形セルの試験生産を始めているといい、1年後をメドにEVで約14万台分に相当する年間10ギガ(ギガは10億)ワット時を生産する考えを示した。別途建設する量産設備では、2022年に年産100ギガワット時のセルを自社生産するという。
自前の生産設備では溶剤を使わず電極を加工する生産工程を取り入れるなどし、将来的に電池の容量当たりの製造コストを現在に比べ56%減らす考えを示した。製造設備を簡略にすることで、容量当たりの投資額も69%減らせる見込みだという。具体的な投資額は明らかにしていない。
テスラは現在、米ネバダ州で年間生産能力が約35ギガワット時の巨大電池工場「ギガファクトリー」をパナソニックと共同運営している。同工場内ではパナソニックがセルを生産して供給し、テスラはセルを数千個使った電池モジュール(複合部品)を組み立ててカリフォルニア州フリーモント市にある完成車工場に出荷している。
テスラは19年末に生産を始めた中国・上海の完成車工場では、韓国のLG化学や中国の寧徳時代新能源科技(CATL)などからセルの供給を受けている。マスク氏は「パナソニックやLG化学、CATLなどから供給を受けるセルも使い続ける」と述べ、自社生産を始めても当面は各社との提携関係を維持する方針を示した。
EV市場でテスラを追う米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などの自動車大手も、化学大手などと組んで巨大電池工場の建設を進めている。テスラは基幹部品であるセルの内製化に踏み込むことで供給力とコストの両面で優位性を維持する考えとみられる。テスラの発表を受け、パナソニック株は23日の東京市場で前日の終値を下回って取引されている。
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