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健康・医療・介護のDX、成否の鍵握るデジタル行政の「パスポート」とは - ITpro

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 健康・医療・介護分野でデータを積極的に活用し、社会課題を解決するためには何をしていくべきか――。日本経済新聞社と日経BPが2022年5月に共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、健康・医療・介護分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)について議論した。

 厚生労働省の水谷忠由保険局医療介護連携政策課長は、2040年までに起こる国内の人口構造の変化と、生産年齢人口の急減について紹介した。「現状、医療福祉分野で働いている方は日本の生産年齢人口の12%程度だが、このままいくと2040年には18~20%、約5人に1人の方に医療福祉分野で働いていただかなくてはならない計算になる」(水谷課長)。

厚生労働省の水谷忠由保険局医療介護連携政策課長

厚生労働省の水谷忠由保険局医療介護連携政策課長

(撮影:北山 宏一)

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 この事態を避けるために必要な取り組みが3点ある。第1に、働ける人の数を増やすことだ。多様な就労や社会参加を進めることによって実現できる。第2に、医療福祉分野のサービス提供効率を高めることだ。これらに加え、健康寿命を延ばして医療福祉分野のサービスを受ける人を減らす努力も必要になる。これが第3の取り組みだ。

 具体的な施策として厚労省が2017年から取り組んでいるのが「データヘルス改革」だ。まず、様々な機関や組織に分散している健康・医療・介護分野のデータを連携し、有効に利活用するための基盤を構築する。その上で、様々な分野でのデータ活用の取り組みを推進する。

 データヘルス改革の一例が2021年10月にスタートしている。マイナンバーカードを保険証として利用できるようにする「オンライン資格確認」だ。医療機関や薬局に顔認証付きカードリーダーを設置し、カードのICチップ内にある電子証明書を使い、窓口で本人確認した後、オンラインでつながったシステムから医療保険の資格情報などを得る。

 水谷課長は「マイナンバーカードの保険証利用により、本人の同意があれば過去の特定健診の結果や処方された薬剤の情報などを医療機関や薬局に提供できる。医療機関や薬局の事務コストの削減だけでなく、より多くの種類の正確な情報に基づいたより良い医療の提供につながる」と説明する。

 オンライン資格確認について水谷課長は「今後のデータヘルスの基盤になる」とみる。2022年夏にはレセプトの一部情報を閲覧可能にし、2023年1月には電子処方箋を発行できるようにするなど、さらなる機能拡張を予定する。「現時点では医療機関・薬局の2割程度でしか運用が開始されていないが、利用のメリットを訴求するなどして普及に努めたい」と水谷課長は続けた。

「デジタル行政のパスポートだ」

 データヘルス改革のように、マイナンバーカードを活用すれば様々なサービスを実現できる。言い換えれば、健康・医療・介護分野におけるDXの鍵を握るのはマイナンバーカードの活用だ。そのマイナンバーについて、カードの発行や関連システムの運営を担うのが地方公共団体情報システム機構(J-LIS)だ。

 J-LISは「マイナンバー制度を始めるときにつくられた組織で、トラストアンカー(電子的な認証の基点)として、公的個人認証サービスを支える仕組みを開発・運営している」(吉本和彦理事長)。

地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の吉本和彦理事長

地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の吉本和彦理事長

(撮影:北山 宏一)

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 吉本理事長はマイナンバーカードについて「デジタル行政のパスポート」と位置付け、「いろいろなサービスが受けられる」と説明した。対面の際にカードの所持と顔写真によって本人確認ができることに加え、ネット経由でもカードのICチップを使ったデジタル認証が可能だ。現在、J-LISが新たにスマートフォンに搭載する電子証明書の「認証局」を作っており、今後はスマホを使った本人確認が可能になる。

 マイナンバーカードを使うことで「先ほど例に挙がった医療機関や薬局だけでなく、多様な分野で本人確認のために利用できる。実際に多くの民間企業に使ってもらっている」(吉本理事長)。例として、銀行における口座開設や住宅ローンを組む際の本人確認に使われていると紹介した。

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