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メタバース普及の鍵を握るコピー技術、そして、ネオ・ヒューマンの人権が課題になる【後編】 - MarkeZine

人間にオリジナルの価値はどの程度あるのか?

 日経MJの記事「国境越えるバーチャルインフルエンサー、人超える影響力」には、以下のように書かれている。

「CG(コンピューターグラフィックス)で作られた『バーチャルインフルエンサー』が百花繚乱(りょうらん)時代を迎えている。ブラジルや米国、日本などで数十万から数百万人規模のフォロワーを持つスターが相次ぎ登場。サントリーなど、自前のバーチャルヒューマンを広告塔にする企業も増え始めた。時に本物の人間をしのぐ影響力を持つデジタルな彼らを追った。 <中略>  島袋みのりさん(25)は『バーチャルということをあまり意識していなかった』と語る。『現実すぎず、でもどこかその場にちゃんといるようなリアル感がおもしろい。バーチャルとリアルのはざまにあるような不思議な美しさにひかれた』。」

 ところで、そもそも私たちは、自分のことをオリジナルの人間だと思っているのではないか。だが、あなたという人間は、正真正銘の、オリジナルの人間なのだろうか。あなたという人間にオリジナルの価値はどの程度あると言えるのだろうか

 工場の生産ラインで同一商品を作り続ける労働者、コンビニでレジ打ちをする店員、会計士や弁護士、医師であっても、AIやロボットで代替可能になりつつある。ほとんどの仕事がIT技術によってコピーされ再現されてしまう。自動運転車によってタクシードライバーが不要になるという人は多いが、それは、ほんの始まりに過ぎない。芸術的でクリエイティブな仕事、画家や作家・小説家の仕事も、いわんや、今私が書いているこの程度の文章なら、いとも簡単に、いずれAIやロボットがもっと良いものを書いてしまう。

 その時、私という人間に価値はあるのか?

 IT技術・コピー技術の進歩は、オリジナルとコピーの攻防を激化させる。そして、その流れの中で、「オリジナルとは何かを問い直す」。

人間もデジタル情報のコピーの産物

 ここで、はっきりしておくべきことがある。「あなたという人間は所詮、コピーに過ぎない」という現実だ。人間とチンパンジーのゲノム情報は98.8%が同じであり、人間はすべての生命と遺伝子情報を多かれ少なかれ共有している(参照:「人間とチンパンジー、98.8%同じ…成長分けた『決定的な差』」)。

 すべての生物は、38億年前からゲノムに刻まれたデジタル情報を連綿と受け継いできた。地球上に存在する生命は、例外なくすべてデジタル情報のコピー(複製)の産物である

 ゲノムを構成するDNAが、我々生命の設計図(ゲノム情報)を担っている。このDNAは、すべての生物に共通である。

「そのあたりの目に見えないバクテリアやウイルスから取り出したDNAも、みなさんの体細胞から取り出したDNAも、化学物質としてはまったく同じものであり、その二つを区別することは不可能である。」(出典:『生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像(ブルーバックス)』田口善弘著)

「たった四つの化学の文字の組み合わせで表わされる三十億もの膨大な情報が書かれている。その文字もAとT、CとGというふうに、きれいに対をなしている。この情報によって私たちは生かされているのです。しかも人間だけではない。地球上に存在するあらゆる生き物――カビなどの微生物から植物、動物、人間まで含めると、少なく見積もっても二百万種、多く見積もると二千万種といわれている――これらすべてが同じ遺伝子暗号によって生かされている。」(出典:『生命の暗号』村上和雄著)

 つまり、DNAは現実の物体を利用したデジタル情報処理である。そこで保持されているゲノム情報には、デジタルデータならではの利点がある。たとえば、ノイズ耐性が強かったり、劣化しにくいなどだ。だが、最大の利点は、やはり、コピーしやすいということだ。

「DNAの複写の仕組みはこんな感じだ。細胞分裂のときにはDNAをコピーして分裂後の細胞に受け渡す必要が生じる。その場合、まず、二本鎖のDNAが分離して、一本鎖になる。それから、前述のように、AにはT、GにはC、が相対するように分子を並べてから、並べた分子を繫いで一本鎖にし、コピー元の一本鎖と合わせて二本鎖にする。」(出典:『生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像(ブルーバックス)』田口善弘著)

 すべての生物が同じ遺伝子暗号によって生かされている。その遺伝情報(ゲノム情報)は親から子へとコピーされ、受け継がれてきた。親子が似ているのはそのためだ。だが、その一方で、すべての生命にオリジナリティがあるのも事実だ。情報はコピーされながらも、オリジナルな個体を作っていく。

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