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元首相銃撃 量刑の鍵握る動機 - 産経ニュース

安倍晋三元首相の銃撃事件は13日、殺人や銃刀法違反罪で山上徹也被告(42)が起訴され、真相解明の舞台は余罪の捜査を残して法廷に移る。歴代最長政権を担った元首相が街頭演説中に襲撃された異例のテロ事件とはいえ、被害者はあくまで安倍氏1人。今後、公判前整理手続きで争点が絞られていくが、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みに端を発した動機が量刑にどう影響するのか、死刑判決の適否を含めて注目される。

聴衆の前で銃撃した山上被告の犯人性は明白で、審理は刑事責任能力の有無や量刑が中心になるとみられる。旧統一教会への恨みが安倍氏の狙いに転じたとする動機には不可解な面もあり、検察側は起訴前に鑑定留置を実施し、刑事責任能力があると判断した。これに対し、弁護側も心神喪失による無罪や心神耗弱による刑の減軽を求め、公判前に精神鑑定を請求する可能性がある。

鑑定留置のため奈良西署から移送される山上徹也容疑者=令和4年7月25日午前10時14分、奈良市(永田直也撮影)

責任能力以外で量刑の鍵を握りそうなのが、政治家を標的にしながら、被告にどこまで「主義主張を実現する目的」があったかだ。

平成19年に現職の長崎市長が選挙期間中に銃殺された事件では、暴力団幹部の男が殺人や公選法違反罪などに問われた。1審長崎地裁は「民主主義の根幹を揺るがす犯行」として死刑を言い渡したが、2審福岡高裁が無期懲役を選び、そのまま判決が確定した。

福岡高裁は選挙妨害自体は認定したものの、動機は「政治的信条ではなく、市長に対する恨み」と判断。何らかの利益を得るための犯行でもなく、極刑の選択は躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ないとした。元刑事裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授は「この判例も踏まえて同様の観点から量刑を評価する可能性が高い」とみる。

山上被告は奈良県警の調べに、旧統一教会への恨みを募らせて「教団とつながりがある安倍氏を狙った」と語る一方、「政治信条に対する恨みではない」とも述べている。検察側がこうした供述を基に犯行動機をいかに立証するかが量刑を左右しそうだ。

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計画性も重要だ。山上被告は試作を繰り返して凶器の銃を自作しており、奈良県警は武器等製造法違反容疑などで立件する方針。事件前日には別の遊説先に足を運んで襲撃の機会をうかがっており、「計画性があり、犯意も強固で執拗(しつよう)だといえる」(水野氏)。

街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃された近鉄大和西大寺駅前の現場付近=令和4年7月8日午後0時8分、奈良市

ただ、事件の背景には、母親による教団への高額献金で一家が窮乏に陥ったことへの恨みがあったとされる。水野氏は「検察側も酌むべき事情として認めざるを得ない。被害者1人で極刑になるのは珍しく、死刑求刑は難しいのではないか」との見解だ。

一方、「死刑求刑の可能性も十分考えられる」とするのは元検事の高井康行弁護士。計画性や執拗性に加え、国政選挙において遊説中の政治家を襲撃することは民主主義の否定につながるという意味で結果が極めて重大だと強調する。

公判では弁護側が「宗教2世」の窮状や、事件を機に被害救済に向けた法整備が進んだことを情状として訴える可能性もあるが、高井氏は「事件とは切り離して考えなければならない。量刑の判断に影響させるべきではない」と述べる。

今回、裁判員裁判で審理されるとみられ、たとえ死刑求刑であっても量刑の判断は最終的に裁判員らに委ねられる。高井氏は、インターネットを中心に山上被告を英雄視する見方があることも危惧し、「そういう動きに裁判員が影響されないよう、検察は情状関係についてもしっかり立証する必要がある」と求めた。

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