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メタバースの普及の鍵は何か? TGSの会場でキーパーソンが議論【TGS2022】 - 日経クロストレンド

「東京ゲームショウ2022」の2日目の2022年9月16日、幕張メッセ国際会議場では「メタバース最前線:ハード・ソフトの進化とこれから必要なこと」と題したトークセッションが開催された。シフトールCEO(最高経営責任者)の岩佐琢磨氏、KDDI 事業創造本部 副本部長の中馬和彦氏、Mogura VR編集長の久保田瞬氏の3人が登壇した。モデレーターは日経クロストレンドの森岡大地副編集長が務めた。

「東京ゲームショウ2022」の会場では、「メタバース最前線:ハード・ソフトの進化とこれから必要なこと」と題したトークセッションを実施。ビジネスデイの来場登録者向けに配信もした

「東京ゲームショウ2022」の会場では、「メタバース最前線:ハード・ソフトの進化とこれから必要なこと」と題したトークセッションを実施。ビジネスデイの来場登録者向けに配信もした

ヘッドマウントディスプレーがスマホ並みに普及する?

 登壇者は自己紹介の後、テーマごとにディスカッションを行った。最初のテーマは「メタバースがさらに普及するために足りないものは?」というもの。

 岩佐氏は、スマートフォンが普及した経緯を例に挙げて「どのジャンルでもそうだが、端末の価格が下がって性能が上がること」とハードウエアメーカーの立場からメタバース普及の可能性について言及した。「手ごろな価格の端末に、より強力なCPUとGPUが搭載されれば多くの人が身に着けるようになると思う。(価格と性能の)フィットポイントがどこになるかは分からないが、ヘッドマウントディスプレー(HMD)をかぶってメタバースの世界を体験したら『もう嫌だ』という人はほとんどいない」と語った。

Shiftall CEOの岩佐琢磨氏は、メーカーの立場からメタバース関連ハードウエアの現状を紹介した

Shiftall CEOの岩佐琢磨氏は、メーカーの立場からメタバース関連ハードウエアの現状を紹介した

 一方、中馬氏は「普及については2段階に分けて考えたほうがいい」と指摘。「HMDはまだスマホほど普及していないので、(メタバースの)サービスを提供できる対象は限られる。その普及に2〜3年かかるとしたら、その間は現状で普及しているスマホで、どうやったらメタバースの文化を根付かせられるかを議論すべきではないか」との持論を述べた。

 中馬氏によれば、現状のメタバースプラットフォームはVR(仮想現実)用のHMD向けに最適化されているため、スマホで利用するには限界があるとのこと。「まずはスマホネーティブのメタバースプラットフォームが登場し始める必要がある」とした。

メタバース空間と現実世界の融合はどこまで進む?

 2つ目のテーマは「ゲームかコミュニケーションか、それとも……メタバースはどこから広がっていく?」だ。

 岩佐氏は「オンラインゲームにもコミュニケーションの要素はあるし、メタバースプラットフォームにもゲームの要素がある。メタバースという山の頂上にゲーム側から登ってくる人もいれば、コミュニケーション側から登ってくる人もいるのが現状だ。現実世界はゲームもコミュニケーションもセットになっているので、最終的には融合することになると思っている」と話す。

 また中馬氏は、以下のようにコメントした。「メタバースはリアルタイムの対話ができる3DCGの世界といえる。オンラインゲームがまさにそれで、プレイヤーにとってはゲームが一番居心地のいい場所であり、そこがコミュニケーションの場にもなっている。ゲームがメタバース化していくのは必然だろう。

 では、ゲームをしない人たちが集まってくる場所はというと、最近トラフィックが多いのはライブ配信。ライブ配信で盛り上がって投げ銭をして、その勢いでミート&グリート(交流会)に参加する流れができている。『17LIVE』(ワンセブンライブ、通称イチナナ)や『Pococha』(ポコチャ)といったライブコミュニケーションアプリでやっていることが、メタバース空間のアバターで展開されるようになると思う」。

 その上で、「HMDを持っている人たちはすでに、それに近いことをやっている。3D対応のスマホが登場すれば、ライブコミュニケーションアプリに近い臨場感が出せるようになり、配信側に回る人も増えてくるのではないか」とした。

KDDI 事業創造本部副本部長の中馬和彦氏は、メタバースプラットフォーム「Cluster」で渋谷区公認の仮想都市空間「バーチャル渋谷」なども手掛けている

KDDI 事業創造本部副本部長の中馬和彦氏は、メタバースプラットフォーム「Cluster」で渋谷区公認の仮想都市空間「バーチャル渋谷」なども手掛けている

 学生時代にMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)にハマって就職活動で後れを取ったという久保田氏は「ゲームの世界は楽しかったが、学校に行く、仕事をする、“推し”に会いに行くなど、現実世界でないとできないことがある。それらをメタバース空間で実現できるようになれば変わっていくと思う」と話した。

 「例えばものを1つ買うにしても、メタバース空間で買い物を完結できるところはほとんどなく、外部サイトに飛ばされる。そうしたことをメタバース空間で完結できるようにしていくことがポイントになる」(久保田氏)と言う。

 これに対して中馬氏は「特定のアーティストがファンと交流する、特定の企業が新商品を発表するといったケースはあり、それなりに成立してると思う。とはいえメタバースが経済圏・生活空間だとすると、イベントがないときは人が来ない状態は課題と言える。話題になったから人が来るではなく、普段の生活と同じようにふらっと立ち寄ってもらえる手法がまだ見つかってない」と付け加えた。

 一部企業やユーザーがコミュニケーションのコミュニケーションの場になってはいるが、実用段階に入るのはまだ数年先というのがメタバースの現状と言えそうだ。

Moguraの創業者であり、Mogura VR編集長でもある久保田瞬氏は、社団法人XRコンソーシアムの理事・事務局長も務める

Moguraの創業者であり、Mogura VR編集長でもある久保田瞬氏は、社団法人XRコンソーシアムの理事・事務局長も務める

メタバース空間同士の相互運用の可能性はあるか

 トークセッションの終了後、会場からは「EC(電子商取引)、ゲーム、コミュニケーションなど、それぞれに特化したメタバース空間を、アバターや交友関係を維持したまま行き来できるような相互運用の可能性はあるか」との質問が出た。

 これについて岩佐氏は「それぞれのメタバース空間は違う会社が運営しているので、相互運用のハードルは高いと思う。ただBlu-rayやDVDのように規格の共通化ができた事例もあるので、実現する可能性はある」と回答。

 久保田氏は「家族とはLINE、仕事のやり取りはFacebook、TwitterやInstagramで情報発信と、スマホに複数のコミュニケーションアプリをインストールしている人は多い。メタバースも用途に応じて使い分けることになるのではないか。アバターを使い分けることにユーザーがどれくらいストレスを感じるかだが、スマホでアプリを切り替えるのはそれほどストレスではないと思う」との考えだ。

 また中馬氏は「アバターくらいは共通で使えたらいいなとは思うが、会社に行くときと、友達と遊びに行くときでは服装を変えるのが現実世界。仕事をするときのアバターと、遊びに行くときのアバターが同じでなくてもいいのかもしれない」との見解を示した。

 今後、メタバース空間を提供するサービスが増え、HMDなどのデバイスも低価格化・高性能化が進んでいくのは間違いない。それにともなってメタバースの普及が進み、現実世界との境界は薄れていくとみて良さそうだ。

(文/堀井塚高)

▼関連リンク 日経クロストレンド「東京ゲームショウ2022特設サイト」 東京ゲームショウ2022公式サイト(クリックで公式サイトを表示します)

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