再生可能エネルギー施設への風当たりが強まる中、地域との共生は図れるか。自治体主導の取り組みが一つの鍵になる。
かつて100頭の牛がのびのびと放牧されていた七ヶ宿町の柏木山放牧場には今、太陽光パネル約5万枚が敷き詰められている。
福島第一原発事故後、牧草から高い放射性セシウムが検出され、牧場は閉鎖された。除染で土を取り除けば保水力が落ち、土砂崩れのリスクが高まる。約45万平方メートルの広大な町有地は、手つかずの「空き地」になった。
震災から2年後、町が打ち出したのは太陽光発電施設の建設だった。
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除染は不要で、斜面に沿ってパネルを置くだけで事業が成り立つ。酪農組合、森林組合、商工会の代表者らで作る協議会を設け、了承を得ながら公募要項や再生エネ基本計画を作った。
公募を経て2015年9月、シャープ(大阪府)などが出資する合同会社が事業者となった。事業者も協議会に加わり、住民側の懸念を聞いた。問題が起これば町と事業者が原因を調べて責任を負うと約束した。
協議会に参加した、発電所に隣接する横川地区の行政区長高橋武則さん(81)は「初めは海の物とも山の物ともわからず、不安もあった。町や事業者の熱心な説明に、それなら任せてもいいと思った」と振り返る。
18年秋に稼働を開始。売電収入の一部は法律に基づき、牧場を含む「農地」を転用して利用する協力金として、20年間で計4億円が町に支払われる。これまで田畑の電気柵の設置や、新規就農者への助成などに充てられている。
町が地権者で、森林を切り開く必要のない牧場と、好条件がそろった珍しいケースではある。小関幸一町長は「今後も災害リスクが低い場所での再生エネ計画を検討したい」と語る。
全国では、より進んだ動きがある。埼玉県所沢市は、ゴミの埋め立て地や調整池の水面などに太陽光パネルを設置している。原発事故を機に、市有地の空きスペースを利用した取り組みだ。
市などが出資した地域の電力会社「ところざわ未来電力」は、再生エネ由来の電気を中心に供給し、学校や病院などほぼ全ての公共施設の消費電力を賄う。市マチごとエコタウン推進課の担当者は「市が旗振り役となり、再生エネを推進している」と胸を張る。
地元合意を得ながら再生エネを普及させようと、国は4月から、自治体が積極的に関わる仕組みとして、誘致したい土地を「促進区域」に指定する制度を設けた。
事業者は自治体や住民との協議を求められる代わりに、森林法など関係法令の複数の手続きを自治体窓口で一元化して行えるメリットがある。相次ぐ住民と事業者のトラブルを背景に、条例で再生エネ施設の規制区域を設ける自治体が増える中、自治体がお墨付きを与える促進区域を設定することで、適地に誘導する狙いがある。
7月には長野県箕輪町が町有施設の屋上などを促進区域にすると公表した。環境省によると、他にも約20自治体が設定を検討している。同省の担当者は「地元の合意が再生エネ普及の鍵。制度の周知とともに技術的、予算的な支援をしていく」としている。
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