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アジャイル開発の鍵を握るコラボレーション・プラットフォーム…コンチネンタル[インタビュー] - レスポンス

12月13日開催のオンラインセミナー「2030年自動車産業にこれから起こる潮流~SDV時代に向けて~」で、コンチネンタル・オートモーティブは「ソフトウェア・デファインド・ヴィークルとOTAの進化」をテーマに講演した。スピーカーはコンチネンタル・オートモーティブ株式会社 アーキテクチャー&ネットワーキング 日本OEM統括責任者 青木英也氏だ。

ソフトウェアファースト、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)のトレンドについていまさら多くを語る必要はないかと思われるが、その取り組みはOEM、Tier1、さらにはソフトウェアベンダーやマイクロソフトやGAFAに代表されるITプラットフォーマーによって様々だ。統合E/EアーキテクチャやビークルOS、SDVといったキーワードで業界の方向性はあたかも一枚岩のように思えるかもしれない。しかし、業界が新たなビジネスモデルを模索する中、各社の得意分野を生かしたアプローチが存在する。

コンチネンタルはコラボレーション・プラットフォームをCASE車両、SDV開発の重要な要素と見ている。これはどういう意味を持つものか。またOTAやSDVが自動車ビジネスにどのような影響を与えるのか。セミナー内容と青木氏へのインタビューを元にまとめてみたい。

コンチネンタルが唱えるSDVとは?

「今日の車のイノベーションの90%はエレクトロニクスとソフトウェアで実現されている。」青木氏はこのように語り、車両のソフトウェア依存の高まりを説明する。業界のエレクトロニクス市場は2030年には現在の2倍に達すると見込まれ、ソフトウェア市場はハードウェア市場を上回るとみられている。

たとえばメータクラスタの大型化、有機ELディスプレイ、デジタルキー(スマートキー)やバレーパーキング(自動駐車支援)、スマホアプリ連携サービス、クラウドをバックグラウンドとしたパーソナライズといった技術がある。これらは、単に車載エレクトロニクスの領域拡大(エレキ部品の増加)にとどまらない。

ソフトウェアによる制御は、車両側のエッジコンピューティングだけでなく、クラウド側のサービスプラットフォームとの連携までつながっている。車両開発および設計は、これら外部のシステムやプラットフォームと接続する前提で行う必要がある。SDVとは、単に新しいE/Eアーキテクチャーを導入しビークルOSが動いていればいいというものではない。

「SDVで重要なのは、新しいビジネスモデルを生むという点。いままでのメンテナンスサポートとは違った車のエンドオブライフまで考えたハードウェア設計、ソフトウェア設計、サービス設計は必須。売ったあとのビジネスを第2の収益の柱とする必要がある。」(青木氏)

SDVがもたらす変化:コラボレーション・プラットフォームの重要性

デジタル革命や脱炭素社会といった周辺環境の変化もあり、SDV、自動車業界におけるDXはおそらく後戻りすることはない。その結果、「車両の開発から市場投入の期間は現在の数年から大幅に短縮される。そのためにはアジャイル開発の発想が不可欠となる。連続的な自動テスト、レポート作成、モデル開発やシミュレーション、データ主導型の開発が進む。ハード、ソフトの分離開発、分離発注も進む。当然ソフトウェアの開発サイクルや期間も変わってくる。ここで重要なのは、この実現にはアジャイル開発へのシフトが必要であるということだ。開発拠点が複数にまたがり、複数のパートナーと協調しながら、システム開発および実車への実装を短時間で行わなければならない。」

大規模なアジャイル開発に必須ともいえるのが、共通の開発プラットフォームだ。それも開発、テスト、ターゲット実装、メンテナンスに対応できるようなものだ。IT業界ではDevOpsと呼ばれる開発手法、GitLab(またはGitHub)といったマルチユーザーのソフトウェアコードのレポジトリ(コードアーカイブやバージョン管理機能を持ったディレクトリシステム)、各種管理ツールでこれに対応している。

コンチネンタルは、「コンチネンタル開発ポータル(Continental Cooperation Portal)というコラボレーション・プラットフォームを構築した。もとは「ICAS(VWの統合型E/Eアーキテクチャー。フォルクスワーゲンのIDシリーズに採用されている)の開発において必要から構築したもの(青木氏)」で、多数のパートナーが開発に関与したICASは、コラボレーション・プラットフォームがなければ実現しなかったという。

ビークルOSやOEM戦略でのTier1の役割

ところで、フォルクスワーゲンは独自に「VW.OS」を開発している。コンチネンタル開発ポータルはビークルOSに対してどのような位置づけになるのだろうか。

コンチネンタル・コラボレーション・ポータルは、CASE車両やSDVの開発基盤なので対象とするOSはとくに問わない。どのメーカーの車両開発、ソフトウェア開発にも対応する。しかし、コラボレーションプラットフォーム(ポータル)の意義は、コンチネンタルが、システム開発のノウハウとリソースを持ち、開発基盤を構築、提供できるという点にある。

たとえば、このポータルシステムを外販したりAWSのようにクラウド開発プラットフォームとしてサービスを展開することも不可能ではないが、同社はいまのところその計画はないという。青木氏によれば、今後はハードウェアのみならずソフトウェアも部品化、共通化がさらに進むという。本来、ワイパーやウィンドウを制御するコードはOEMやサプライヤーごと、車種ごとに個別に開発する必要はない。少なくともユーザーにとって、その違いはSDVの機能や価値の本質ではないものだ。

「SDVにとって重要なのは、開発プラットフォームがなにか、どんな技術が使われているかではなく、ユーザーにどんな価値を提供できるかだ。SDVのSはソフトウェアの意味だが、本質はソフトウェアで制御されていることになく、提供できる体験やサービスによって価値や機能が定義される車かどうかということだ。そして、その体験やサービスはセキュリティー機能で守られていることも必須だ。」

SDVもソフトウェアもゴールや目的ではなく、今後の新しいモビリティビジネスモデルを生み出し、ユーザーに新しい価値を提供するためのコンセプトといえるだろう。

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