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“世界初”自動運転レベル3、CASEとMaaSの法改正の動向…森・濱田松本法律事務所 弁護士 佐藤典仁氏[インタビュー] - レスポンス

「CASE」と「MaaS」の法改正に動きが出てきている。

世界に先駆けて、2020年4月から日本で自動運転レベル3の自動車に乗って公道を走れるようになる。自動車の車両についての「道路運送車両法」と、交通ルールについての「道路交通法」が2019年に改正され、2020年4月に施行されるからだ。

また、高齢者の移動手段の確保や観光などで注目されている「MaaS」。関連する地域公共交通活性化再生法を一部改正する法律案が2020年2月7日に閣議決定されるなど動きがでている。

 CASEとMaaSの動きをすべて把握しておきたいが、理解するのは難解だ。そこで国土交通省の自動運転に関係する部署に出向経験があり、CASEやMaaSの法律に詳しい、森・濱田松本法律事務所の佐藤典仁弁護士に聞いた。

佐藤氏は、 3月25日開催セミナー「CASE・MaaSの最前線」に登壇し、自動運転車の実用化・MaaSの導入に向けた法改正のポイントについて講演する。セミナーはオンラインでも開催する。

自動運転で世界をリードする日本

---:自動運転の法整備は、ドイツ、アメリカ、中国などと比較してどのような進捗ですか?

佐藤氏:日本は自動運転の安全基準の枠組みづくりで世界をリードしています。

例えば、自動車の安全基準などの国際基準について議論されるWP29(自動車基準調和世界フォーラム)で、自動運転に関わる基準を議論する分科会のすべてにおいて議長や副議長などの要職を務めています。

WP29では自動運転レベル2の安全基準は一通り出来ています。自動運転レベル3を対象にした基準案の検討も進んでいます。

ドイツでは、世界に先駆けて、日本の道路交通法と道路運送車両法に相当する法律を改正しましたが、国際基準がまだ策定されていませんので、当面、自動運転レベル3の自動運転車は公道を走れません。アメリカや中国も実証実験は実施しているものの、法整備はまだです。

したがって、日本は世界に先駆けて、自動運転レベル3の安全基準の枠組みを具体的に示したと言えるでしょう。

「レベル3」のみならず「レベル4」も

---:道路運送車両法の法改正について教えてください。

佐藤氏:レベル3、レベル4の自動運転は、いつでもどこでも安全な自動運転を行えるわけでなく、ある一定の条件下で、自動運転システムに運転操作をゆだねることができる、というものです。ここで設定される特定の条件のことをODDといいます。例えば、高速道路で時速60km以下といったような条件を設定することが考えられます。レベル5は、ODDを設定することなく、いつでもどこでも自動運転ができる状態のことを言います。

レベル3とレベル4の違いについて。レベル3では、自動運転システムの作動継続が困難な場合には、ドライバーが運転を引き継ぐことが求められます。レベル4では、ドライバーへの介入要求は出されず、ドライバーが運転操作に一切関与することなく、全ての運転操作をシステムが行い、システムの作動継続が困難な場合への応答もシステムが行うことができるものです。ですので、レベル4の場合には、ドライバーがいないことも想定できます。

レベル3では、突然の大雨・吹雪の場合やなどに、ODDから外れることになり、システムによる運転ができなくなるため、ドライバーに対して介入要求が出されることになりま、ドライバーが運転を引き継ぐことになります。

2020年4月の道路運送車両法の法改正では、自動運転システムごとにODDを設定し、国交大臣から付与されるという法整備を行っています。これは、レベル3のみならずレベル4も対象にしていますので、海外と比較して先行していると言えます。

自動運転システムに関する道路運送車両法の法改正のポイントは主に3つです。自動運転システムを道路運送車両法の中の安全基準の項目の1つに加えるとともに、作動状況の確認に必要な情報を記録する装置を備えることとされたこと。国交大臣が付したODDの条件下で安全を確保すること。そして自動運転に必要なカメラやレーダーの調整等の整備に関する規定を整理したことです。

また、テスラの車のように、OTAで車の機能を変更することが可能になってきていますので、自動車メーカーが自動運転等のソフトウェアをアップデートする際には、国が事前に確認する許可制度が創設されました。

道交法上は自動運転中のスマホ操作可に

---:道路交通法について教えてください。

佐藤氏:道路交通法は、レベル3までの法改正で、レベル4はまだです。

レベル3の自動運転車のドライバーには主に2つ義務が課されています。ODDの条件外では自動運転システムを使用してはならないこと。もう1つは、自動運転システムが故障やODD外になりシステムによる運転ができなくなったら、その場合に出される運転引継の要請に対してすぐに対応しなければいけないこと。

一方で、自動運転システムがしっかり作動しており、ドライバーがすぐに運転を再開できる状態にあるのであれば、スマートフォンの操作もできるようになります。

改正があったのは、「道路運送車両法」「道路交通法」のみですが、民事責任については、例えば、自賠法に基づき自動車の所有者が原則として自動運転中の自己の責任を負うといった解釈が整理されています。

MaaSの運賃設定に係る手続きのワンストップ化や協議会制度

---: MaaSに関連した最近の主な法律の動きは?

佐藤氏:国交省の地域公共交通活性化再生法、道路運送法の改正と、乗合バスおよび地域銀行に関する独占禁止法の特例法案です。

地域公共交通活性化再生法・道路運送法では、地域公共団体による「地域公共交通計画(マスタープラン)」の作成を努力義務とし、より強く求めています。KPIとして、地域公共交通(網形成)計画の策定件数は、2019年7月現在は524件でしたが、2024年度には1,200件にする目標を掲げています。

また、バス会社などが事業でカバーできないところを過疎地などで市町村などが行う自家用有償旅客運送。これまでは原則として地域住民が対象でしたが、観光客を含む来訪者も対象に加えることにしています。

そして、MaaSに参画する複数の交通事業者の運賃設定に係る手続きのワンストップ化やMaaS協議会制度も創設されます。

さらに、乗合バスおよび地域銀行に関する独占禁止法の特例法案では、国交大臣の許可を受けて行う乗合バスなどの共同経営には独禁法のカルテル規制の適用が除外されます。

これらの法案については、2020年の通常国会で審議される予定です。

その他、MaaSを構成する各種モビリティサービスについても規制に動きがあります。たとえば、タクシーに関しては、事前確定運賃の導入や、ダイナミックプライシングの実証実験などです。

佐藤氏が登壇する3月25日開催セミナー「CASE・MaaSの最前線」はこちらから(オンラインセミナーも)。

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March 19, 2020 at 01:15PM
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