色無地か、華やかな訪問着か…決めかねていた。娘の高校卒業式に私がどんな着物を着るかなんて誰も興味無し、一人悩む。主役は娘、ならば控えめに色無地が無難。でも3年間を乗り越えて迎える晴れの日、それでは少し物足りなさがよぎる。
振り返れば、子供と大人の境界線を行ったり来たりする娘相手に、こちらも悪戦苦闘。朝から感情をぶつけ合い、きっと泣き顔の後姿を見送った日、後悔が渦巻いた。
コーラス部のコンクールを追っかけ一喜一憂。一瞬を逃すまいと押し続けたシャッター。何も起こらない日なんかなかった。娘が女子高生を謳(おう)歌(か)する間、私も女子高生の母を謳歌させてもらった。卒業するのは確かに娘だが、ともにたどり着く区切りの日、寂しさを覆い晴れやかな気持ちで臨むためにも華やかなものをまといたい。
そう思った矢先、知らせが届いた。卒業式は中止です、と。コロナウイルス感染拡大を防ぐ措置のためだった。
卒業式2日前、リハーサル終了直後に聞かされた娘たちは驚きの声をあげ、泣いたそうだ。最後の最後にこんなことが起きるなんて。それでも、卒業式は縮小しつつも先生方が心温まる式をしてくださった。ただ、保護者の参列はなくなり、思いがけず私は悩みから解放された。
まだ、卒業した実感が湧かない。これほどお世話になった先生方に感謝も、娘のお友達におめでとうも伝えられず、尻切れトンボという言葉がぴったりだ。こんなことは今年だけでいい。普通に普通のことを味わえる幸せが一日も早く戻ってきますように。
その幸せを全身にまとえる晴れの日に備えてまずは虫干し。季節外れでも構わない。あちこちを虫干ししたい。
松本香(52) 兵庫県尼崎市
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March 21, 2020 at 03:00AM
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【朝晴れエッセー】普通を味わえる幸せ・3月21日 - 産経ニュース
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