「野外で密にならない」と、ゴールデンウイークのレジャーに人気のキャンプ。慣れないうちは、道具の扱いや、天候の見極めなどに戸惑うだろう。自然を楽しむために必要な準備や安全面の注意点を専門家に聞いた。(津川綾子)
家から始まる
キャンプを楽しむ鍵は事前の準備にあり-。そう説くのは、ともにキャンプインストラクターの資格を持つユニット「野あそび夫婦」の青木達也さんと江梨子さんだ。
例えばテント。キャンプ場で箱を初めて開封し、説明書とにらめっこして3時間ほどかけて組み立てる初心者も見られるという。
組み立て目安時間が「30分」とあっても、初心者は手間取る場合もある。可能な範囲で家で試しに組み立ててみることをすすめる。
慣れない作業で疲れてはせっかくの自然も楽しめない。ならば、家で事前に慣れておく、という作戦だ。
説明書にじっくり目を通し、分からないことは調べておく。ペグ(杭)や、杭を打つハンマーなどの付属品の過不足も確認しておこう。
また食事も事前に家族で話し合って準備を進めよう。「必要な食材の皮むきや切り分けを終えておくと、キャンプ場で出るごみを減らせます」
過去に学んでおく
「黒い服 攻撃されるぞ ハチたちに」
「中州では テント張らない 遊ばない」
これは日本キャンプ協会(東京)の「キャンプの安全いろはかるた」の読み札の一部だ。
注意点は多々あるが、「キャンプに『こうすれば安全』という方法はない」と同協会の高橋宏斗さん。ただ、「過去にどんなトラブルや事故があったかを知っておくだけでも、リスクは減らせる」という。
例えば平成11年8月、玄倉川(神奈川県山北町)の中州でキャンプ中の人が増水した川に流され13人が死亡。以降、中州でのキャンプは厳禁と知れ渡った。
「川は雨で一気に増水する」と高橋さん。川辺で過ごす場合は、「直前の天候に加え、上流にダムがあるのか、放流の可能性があるのかなど、事前に調べて」と呼びかける。また悪天候の予報が出たら潔く中止することも念頭に置こう。
火の扱いにも注意が必要だ。令和2年、北海道のキャンプ場でストーブの近くにあったガスボンベが爆発した。高橋さんによると「たき火を芝生の上で直接行ったという例」も見られ、扱い方を知らずに危険を招くことも想定される。
「たき火は、キャンプ場のルールに従って専用の台やシートの上で行い、火がついている間は、目を離さないのが基本」と野あそび夫婦の江梨子さんも言う。目を離したすきに、風で火の粉が飛ぶと、テントに穴が開いたりボヤが生じたりする恐れもある。火消し用の水も備えよう。また就寝前にたき火が消えるように、薪(まき)をくべ過ぎないようにしよう。
ごみも管理を
意外と忘れがちなのが、「野生動物への気遣い」(高橋さん)。特にごみの処理に注意したい。ごみ袋に入れただけで外に放置すると、夜中に鳥や動物につつかれてしまう。クーラーボックスや車のトランクにおさめよう。
「キャンプに来た他の人や、その場の自然、その場の動物にも気を配りながら楽しんでほしい」と高橋さんは話している。
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