「有権者一歩手前」の本音が教室に充満した。
「全ては政治が決める。反発しても無駄」と1人の生徒が主張し、隣の席の生徒が「意見を聞いてくれる人、いないよね」とうなずく。向かいの席から「言っても変わらない状況で育ったし」と声が飛ぶ。
石巻市桜坂高で5月下旬にあった公民科目「公共」の授業。「社会を変えられると思う若者が日本に少ない理由」について、1年生たちが意見を述べ合った。
「正解とかはないからな」。豊川由峰教諭(38)が呼びかける。生徒の意見に「いいね」「素晴らしい」と相づちを打つ。
「公共」は本年度、主体的で深い学びを目指す必修科目として新設された。実社会への参画に向けた知識や態度の形成が目標だ。
豊川教諭は授業スタイルを大きく変えた。板書の書き写しはほぼやめ、生徒同士の議論に多くの時間を割く。自分は黒子に徹する。
政治に否定的な声が多いが、心の中に小さな種は植えられたのではないか。「主権者意識みたいなものが芽生えるかもしれない」。手応えも感じている。
2016年に18歳選挙権が導入され、今年4月には成人年齢が18歳に引き下げられた。1969年から禁止されていた高校生の政治的活動も容認されたが、過去の名残もある。
「放課後や休日の校内では禁止」「校外でのデモや集会への参加は認めるが、学校への届け出が必要な場合がある」
河北新報社が宮城県教委への情報公開請求で得た資料によると、県立全77高校の半数以上に、生徒の選挙運動や政治的活動に関する校則がある。
文部科学省は15年の通知で、高校生の政治的活動は「無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」とした。高校の18歳成人は法的には大人だが、現実は「子ども」にとどまる。
5月の大型連休、盛岡市の盛岡誠桜高の生徒会メンバーが名古屋市であった「全国高校生サミット」に参加した。約200人がそれぞれ取り組みを紹介し、交流した。
ロシアのウクライナ侵攻に反対を決議した生徒会、アフリカの過酷な児童労働を訴える生徒。3年松田美空さん(18)は同世代の報告を複雑な思いで聞いた。
昨年1月、岩手県庁前に同高生ら約250人が集まった。公立高に比べ遅れる私立高の校舎耐震工事への補助拡充を求めるためだ。「県が応じない」と聞き、憤って駆け付けた。
「私たちの命を守ってください」。降雪の中で声をからしたが、返事はなかった。得たのは、活動を批判するインターネット上の多くの書き込みだけだった。
「高校生は政治の主役じゃない。意見を言っても大人は向き合ってくれない」
投票権を得て最初の選挙となる参院選(22日公示、7月10日投開票)は棄権しようと思っている。寒さに震えながら人生で初めて感じた衝動が、今は心の澱(おり)として残る。
続く新型コロナウイルス禍、収束しないウクライナ情勢。倦(う)みと不安が社会を覆い、鬱屈(うっくつ)した空気が私たちを包む。参院選を前に民意の現在地を探る。(5回続き)
河北新報社は8~12日、「読者とともに 特別報道室」の無料通信アプリLINE(ライン)で友だち登録する読者に今回の連載内容に関連するアンケートへの協力を呼びかけ、311人から回答を得た。一般の世論調査とは異なる。
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