政府がマイナンバーカードの普及に向けてアクセルを踏んでいる。現行の健康保険証を令和6年秋に廃止してマイナカードを代わりに使う「マイナ保険証」に切り替えるほか、カードと運転免許証の一体化も6年度末としてた実施時期の前倒しを検討。政府はカードの用途が多様化することで利便性が向上するとアピールするが、個人情報漏洩への不安や不信感に加え、取得の煩雑さによる反対論も少なくない。識者は、政府による丁寧な安全性の説明や取得支援が普及のカギになると指摘している。
「本人」確実に証明
「持たないとどうなるかわからないので、いろいろもらえるうちに作ろうと」。先月末、東京都板橋区が区内の商店街で行ったマイナカード出張申請サービスに訪れた50代の女性会社員は、申請の理由をこう説明した。
同区では昨年11月から出張申請の利用者に、2千円分の区内共通商品券を贈呈する事業を行っている。この日は開始から2時間で約100人が申請。区戸籍住民課の担当者は「マイナポイントの当初期限の9月末に駆け込みで申請する人がたくさんいた。最近ではマイナ保険証に切り替えの話もあり、申請が大幅に増えている」と話す。
国内に住む全ての人に割り当てられた12桁のマイナンバー(個人番号)や顔写真、氏名、住所などが記されたマイナカード。裏面に張られたICチップにはインターネット上で他人のなりすましを防ぎ、本人だと確認するための「電子証明書」が記録されている。今年9月末時点で交付が完了したのは人口の49%だ。
政府は普及を急いでいるが、これは社会に何をもたらすのか。
野村総合研究所の梅屋真一郎氏(57)は、マイナカードを「いろんなところで使える安心な鍵」とした上で、「それぞれの財布の中に、本人だということを確実に証明できる鍵が入った社会になる」と説明する。
国の給付迅速化も
マイナカードに記録されている電子証明書は2種類ある。
一つは、ネットで送信した文書や書類が、自分で作成した本物であると証明するもの。この証明により、ネット上で文書提出が伴う申請や確定申告ができるようになる。
もう一つは、ウェブサイトなどにログインする際、ログインした人物が利用者本人であると証明するもの。コンビニで住民票の写しの交付が可能になったのもこの証明のおかげだ。
梅屋氏はマイナカード普及後について「行政や民間企業で、本人確認できないことからあきらめていたネットやデジタルのサービスをできるようになる」と展望。オンラインバンキングで取引をする際マイナカードを用いれば、簡単に本人確認したり、国の給付事業を迅速化したりすることも期待できるという。
不安払拭には
一方、普及のネックになっているのが、安全性に対する不安や手続きの煩雑さだ。
デジタル庁が今年8~9月にかけて実施したアンケートでは、マイナカードを取得しない理由について、情報流出が怖いからが32・9%、申請方法が面倒だからが31・5%あった。
実際はどうなのか。
マイナカードには個人情報を守るための複数の仕組みがある。カード自体には税や年金など詳細な個人情報は保存されておらず、不正な手段で情報を抜き取ろうとした場合はICチップが壊れ、情報流出を防ぐ。万が一、紛失した場合も利用の一時停止を受け付けるコールセンターが24時間稼働中だ。
ただ、こうした対策は広く知られていない。梅屋氏は「国は安全性を丁寧に説明していくしかない」とする。
解消すべき問題もある。マイナカードを紛失した場合、現状では再発行にかかる時間は約1カ月。保険証や運転免許証が一体化された際に紛失すれば生活に大きな支障をきたす。求められるのは、安全かつ迅速に再発行する枠組みだ。
申請手続きの複雑さで発行に二の足を踏む人もいる。さらに交付を進めていくためには、自治体が出張申請を行ったり、手続きを手伝ったりする支援が求められる。梅屋氏は「普及のめどは立ってきたが、保険証にするなら一人の漏れもないようにしなくてはならない」と指摘、「最後の一人にまで配れるよう、国は自治体を支援すべきだ」と訴えた。(深津響)
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