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アングル:冬を迎えたウクライナへの電力支援、鍵を握る東欧諸国 - ロイター (Reuters Japan)

[ビリニュス/ワルシャワ 21日 ロイター] - 1980年当時ウクライナで製造され、今はもう使われていない巨大な変圧器の埃が払われ、ここリトアニアを出発しようと準備されている。恐らくここ数週間以内にルーマニアに向かい、そこからウクライナに里帰りの予定だ。

 12月21日、1980年当時ウクライナで製造され、今はもう使われていない巨大な変圧器の埃が払われ、ここリトアニアを出発しようと準備されている。写真は停電したキーウの街並み。16日撮影(2022年 ロイター/Gleb Garanich)

リトアニアの電力網を運営するリトグリッドのローカス・マシューリス最高経営責任者(CEO)によれば、ロシアによる度重なるミサイル攻撃で損害を受けたウクライナの電力システムを復旧するために必要なものが何か他にも残っていないか、倉庫を探し回っているという。

「ウクライナ側からは、動作しないもの、故障品でも何でもいい、こちらで修理できるからと言われている」とマシューリスCEOはロイターの取材に語った。

西側諸国がウクライナ軍の武器弾薬の補充を急ぐ一方、欧州やその他地域の諸国は、冬を迎えたウクライナに照明と暖房をもたらすべく、先を争って変圧器、開閉器、ケーブル、さらにはディーゼル発電機を供給している。

ウクライナは、電力供給を維持するために緊急に必要となる約1万品目のリストを欧州諸国に提示している。

支援の主役は、旧ソ連圏諸国や元共産主義国だ。地理的にも近く、またこの地域の電力網にはウクライナ側と互換性のある機器が残っている。

マシューリスCEOは、最も必要とされているのは、彼らがウクライナに向けて発送しようとしているような単巻変圧器だと話す。価格は約200万ユーロ(約2億8000万円)、重量は200トン近い。輸送に向けて脱着可能なパーツを外し、オイルを抜き取るために2週間を要する。

「我が国では電力網の更新を進めている。退役させるものはすべてウクライナに送る」とマシューリスCEO。

リトアニアの北に接するラトビアも、かつては旧ソ連圏に含まれていた。同国も大型の変圧器を5台ウクライナに送る予定で、そのうち2台はまもなく輸送の準備が整うという。

10月上旬以降、ウクライナのエネルギー関連インフラを標的としたロシアの攻撃により停電が発生し、何百万人もの住民が、ほとんど、あるいはまったく暖房のないまま、氷点下の気温を耐え忍んでいる。

ロシア政府は、こうした攻撃はウクライナを非武装化する「特別軍事作戦」の一環として正当化されると主張している。ウクライナおよび西側諸国は、相手側の戦意を喪失させ弱体化するための民間人を狙った冷酷な無差別攻撃だと見ている。

欧州域内の団体、アゼルバイジャン、フランス、ラトビア、リトアニア、ポーランドといった諸国、さらには個別の企業も、すでにウクライナ向けに多数の機器を送った。

ウクライナでエネルギー副大臣を務めるヤロスラブ・デムチェンコフ氏は、「ロシアの攻撃により破壊された機器を交換するため、世界中に助けを求めている」と語る。

デムチェンコフ氏は、ウクライナは送配電システムの「完全崩壊」を何とか回避したものの、混乱は大きいと話している。今週、ミサイルとドローンを使ったロシアの攻撃により、キーウ地域のほぼ80%では2日間にわたって停電した。

対応が緊急かつ五月雨式であることから、各国からの支援が総額どのくらいになるか試算は不可能だ。だが、数億ドルとまでは言わずとも数千万ドルに相当する変圧器・発電機がすでにウクライナに向けて発送されている。

課題の1つは、ウクライナのニーズに見合った適切な機器を見つけることだ。旧ソ連圏の一員だったウクライナの電力システムは、必ずしも他国、それも北方の近隣諸国の規格と互換性を備えているわけではない。

企業担当者らによれば、発電機の供給は需要に追いついていないという。最も必要な機器を届けるために数カ月を要する場合もある。

キーウのエネルギー産業研究センターのオレクサンドル・ハルチェンコ所長は21日、ウクライナ国営テレビで「残念ながら、いま最も必要とされている高圧変圧器はまだ到着していない」と語った。

ハルチェンコ所長によれば、発送可能なものは世界に数台あるが、到着するのは最速でも2月だという。

<巨大な変圧器>

リトアニアの送配電網事業者は、すでに小型の変圧器数百台をウクライナに向けて発送した。発電所からエンドユーザーに向けて送電する際に電圧を低下させる装置だ。またガス供給事業者もスペアパーツをウクライナに送っている。

ポーランドの国営エネルギー企業タウロンは先週、総延長21キロの電線、ドラム9台、絶縁器129台、変圧器39台、過電流ブレーカー11台をウクライナに送ったと発表した。広報担当者のリュカス・ジムノック氏は、「贈与」であると表現している。

こうした支援の一部はウクライナの要請に応えたものだが、ウクライナの民間企業は事業継続のために交換用の機器を発注している。

発電機メーカーEPSシステムズのジェルツィ・コワリック営業部長は、ウクライナから多くの注文を受けており、その中には一度に大型機器数十台という規模の注文もあると話している。

「エネルギー危機を背景にグローバル規模で発電機需要が高まっている中で、当社の発電機で使っているエンジンの確保も難しくなっている」とコワリック部長。従業員数約100人のEPSシステムズでは需要に対応しきれず、ウクライナからの注文の一部は断っている。

ウクライナの送配電事業者ウクレネルゴのボロジミル・クドリツキー取締役会長は、規格の違いが原因で、急務である変圧器の調達に手間取っている、と語る。ウクライナの標準的な送電線が電圧750キロボルトと330キロボルトであるのに対して、たとえば隣国ポーランドでは400キロボルトと220キロボルトだ。

開閉器や遮断器、サーキットブレーカーなども不可欠だ。ウクレネルゴでは、電力供給回復のために約70の復旧担当チーム、総勢約1000人が24時間体制で取り組み、下請け業者も使っている。

<さらに長期的な供給計画は>

ウクライナ国内の消費電力は、ピーク時で約16ギガワットだ。そのうち最大10%までは近隣諸国の電力システムから輸入できるが、ポーランドとの連系線は最近の攻撃で損傷を受けてようやく復旧したところで、ルーマニアからの供給はこれまでのところわずかな量に留まっている。

したがって、ウクライナの頼みの綱は、侵攻の可能性を予期して備蓄しておいた予備機材と他国からの支援ということになる。

デニス・シュミハリ首相は今月、ウクライナ企業により小型発電機50万台がすでに輸入されているとしつつ、この冬を乗り切るためには産業用の大型発電機が1万7000台必要だと述べた。

病院や水道ポンプ場などの重要インフラでは、こうした発電機が特に重要だ。

欧州諸国からのウクライナ向けエネルギー支援を監督する機関の1つが欧州エネルギー共同体事務局だ。欧州連合が設立した国際機関であり、EU加盟を希望する8カ国も参加している。

アルチュール・ロルコウスキー事務局長によれば、欧州20カ国にわたる60以上の民間企業が支援に参加しており、すでに800トン以上の機器がウクライナに送られ、さらに数十件の輸送が予定されている。

欧州各国の国営電力網における機器のストックは底を突きつつあり、ウクライナのエネルギー関連インフラの需要に応える上で、ロルコウスキー局長は民間セクターがさらに重要になってくると予想している。

また、米国やカナダ、日本の企業にも支援を働きかけられないか、主要7カ国(G7)首脳会議を通じた協議が進められている、と同局長は語った。

ロルコウスキー局長はロイターに対し、「そうなれば、ウクライナの復旧を効果的に進められるだけの規模が実現するだろう」と語った。

当局者によれば、米国からはインフラ復旧支援の第1便として総額1300万ドル(約17億円)相当の電力関連機器がウクライナに向けて出発した。さらに2回の空輸がまもなく出発する予定だという。ウクライナは日本とも協議を進めている。

ロルコウスキー局長の他、複数の当局者は、ハードウェアをゼロから設計・製造する必要が生じかねないと予想しており、そうした変更がある場合は時間と費用がかかると言う。

ウクライナ経済を西側諸国と統合することを望む同国当局者は、エネルギーセクターの本格的な見直しを検討しているが、今のところは、現行の電力網の補修が最優先となっている。

輸入された機器の一部は贈与とされているが、ウクライナ政府によるインフラ復旧を支えるため、各国・国際金融機関は融資や助成金も提供している。

ウクライナのエネルギー省で改革支援チームのディレクターを務めるオレナ・オスモロブスカ氏は、エネルギーシステムを完全に復旧するには、数百億ドルの費用がかかるだろうと述べている。

(翻訳:エァクレーレン)

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