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『TENET テネット』エンディングで全てがつながるストーリーを徹底解説【ネタバレあり】 - Esquire

※この記事にはネタバレが含まれていますので、ご注意ください。


 「これは時間挟撃作戦だ」

 映画『TENET テネット』が始まって2時間後、アーロン・テイラー=ジョンソン演じる部隊指揮官アイブスの説明を受け、やっと事態がはっきりと見えてきます。そこで、われわれはさらに混乱することでしょう(中には、深く理解できる方もいるはずです)。そこで1つ確かなことは、クリストファー・ノーラン監督の新しい難解映画は終盤に差し掛かっているということです。そして、「まだ始まったばかりなのか?」と錯乱してしまう方も少なくないでしょう。そう、まさにこの映画は挟撃(きょうげき)…時間の挟み撃ちで構成されているのです。

 はっきり言って『TENET テネット』は、かなり混乱する作品です。大掛かりな爆発や逆行するカーチェイス、そして、理論物理学(理論的な仮定を基に理論を構築して、既知の実験事実や自然現象などを説明し、かつ未知の現象に対しても予想する物理理論)が入り混じっているのです…。

 1シーン1シーンは、観ていて楽しいでしょう。そして、理解もできるはずです。が、それが複数のシーンが重なると、一体何が起きているのか把握し続けるは困難になるはずです。そしてエンディングを前に、観客たちは時間を逆行しているもう1人の登場人物にも注目しなければならなくなるのです。

 しかも、アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)がなぜ時間を逆行させようとしているのか? 成功したら何が起きてしまうのか? なぜテネットのアルゴリズムがすべての鍵を握っているのか? も、理解しなければならないのです。

 そこでこの難解映画を、ここで少しだけひも解いていきましょう。

「テネット」を徹底解説

MELINDA SUE GORDON

 まずは、アイブスが何度か説明している概念である、「時間挟撃」について見てみましょう。通常の挟み撃ちでは、戦闘部隊は敵を出し抜いて同時に前後または左右から攻撃をかけ、防御面を拡張することで敵の力を分散させる作戦です。時間の挟み撃ちも同じような方法で敵を攻撃しているのですが、挟み撃つもう一組の味方は、元の攻撃の結果を知っている、時間を逆行してきた部隊なのです。

 もうすでに、頭が痛くなってきた方もいるでしょう…。でも、続けて読んでください(笑)。この映画自体が、時間の挟み撃ちになっているのです。2つの戦線で行われている戦闘に対し、観客は過去と未来の間で行われている戦争の真っ只中にいるわけです。

 映画の冒頭近くでジョン・デイビッド・ワシントン演じる主人公(名もなき男)は、クレマンス・ポエジー演じる科学者に会います。そこで彼女は、未来のどこかの時点で、人や物のエントロピー(熱力学および統計力学において定義される示量性の状態量のこと。その乱雑具合を表す指標と言えます)を逆転させる技術が発明されることを主人公に説明します。

 ここで、それが物理的にどのような意味を持つのかは、あまり重要ではありません。セイターのほうは、このアルゴリズムを使って時間の流れを永久に逆転させることを計画しているのです。つまり、単純に時間を逆流するだけではありません。未来に存在する人によって、過去を上書きすることも可能となるわけです。そうなればどうなるか? 現在、流れている時間にいるすべての人々は消滅し、おそらく宇宙自体も消滅してしまうでしょう。

「テネット」を徹底解説

WARNER BROS.

 最後の銃撃戦で、善悪でいうなら善のほうの軍隊(主人公の味方)は、青と赤のチームに分かれます。赤チームは通常の時間の流れを進みます。ですが青チームは、同じ兵士たちが10分後に時間をさかのぼって攻撃するのです。

 赤と青のライトも、過去と現在を区別するための方法です。時間逆行装置でつながった2つの部屋でも、赤い部屋で主人公と一緒にいる現在のセイターが、青い部屋で過去のセイターが妻であるキャットの頭に銃を突きつけるのを見ています。これはノーラン監督が「マクスウェルの悪魔」の思考実験をもとに考えたものだと思われます。

 この思考実験は、主人公が銃弾を受け止める練習をしているシーンで、背景のホワイトボードにも書かれていました。簡単に説明すると、異なる分子の入った2つのシステムがあり、そのシステムをつなぐ扉を開けると法則が変化し、エントロピーなどの自然定数を壊すという理論的な方法です。

 ホワイトボードに書かれた思考実験の図では、赤と青の分子が別のシステムに移動しており、悪魔が扉を開けると、未来と過去の赤と青が互いに影響を与える様子を表しているように見えるでしょう。

「テネット」徹底解説

MELINDA SUE GORDON / WARNER BROS.

 映画の時間挟撃作戦では、ニールが回転扉を抜けて赤チームを助けてから、また逆行して青チームを助け、そのまま彼のループを完了させるために先へと進んでいます。青チームは10分後からのカウントダウンを、赤チームは10分後へのカウントアップをしながら時間に追われているこの戦闘シーンで、映画のタイトルの本当の意味が明らかになります。

 「Tenet」とは、「ten」の回文。この映画のクライマックスである、過去と未来の10分間の挟撃作戦を指しているのです。最後のシーンでは、ニール(ロバート・パティンソン)が自分の雇い主は未来の主人公(ジョン・デイビッド・ワシントン)であることを明かし、映画のループが閉じられます。これがニールが常に一歩先を行っていて、これから何が起きるか知っていた理由であり、主人公が仕事中に酒を飲まないことを知っていた理由でもあります。

 立ち去るニールのリュックに赤いストラップがついていたのも、これに関する大きなヒントと言えます。これは、最初のキエフのオペラハウスのシーンで逆行弾から主人公を救った兵士や、挟撃作戦中に扉を開ける兵士がつけていたのと同じ。

 ニールが説明したように、これが彼にとっての終わりなのです。彼は作戦の反対側の時間へ戻り、扉を開け、主人公の代わりに打たれなければならないのです。ニールのループはここで閉じられますが、主人公にとっての物語はここからスタートするということになるのです…。

「テネット」の徹底解説

COURTESY OF WARNER BROS. PICTURES

 「一体どうやって?」と、まだ混乱しているあなたは頭を抱えているかもしれません。エピローグでディンプル・カパディア演じる、時を逆行する弾丸を扱うムンバイの武器商人サンジェイ・シンの妻プリヤのクルマの後ろに座った主人公が説明するように、組織「テネット」の創立者は主人公自身だったのです。未来の彼が開発し、このミッションをつくり上げ、ニールを雇って必要な情報を教え込んだというわけです。また、過去の主人公を雇ったのも未来の主人公であり、未来の彼が糸を引いていると明かさずに、彼自身を巻き込むためのミッションをつくったのです。

 プリヤに会いに行った理由は、「テネット」のことを知っているキャットを彼女が殺そうとしていたためです。主人公が手渡した携帯電話でキャットが自身の居場所を伝えたため、彼は時間を逆行して彼女を救うことができました。観客は、ここまで観てきたものによって、一連の出来事が変わることはないことを知ります。すでに起きてしまった出来事だからではなく、未来の世界は未来を安全なものにするために、すでに過去を訪ねているからです。

 このエンディングは、『TENET テネット』に続編があることを示しているのではないか…というもあります。この後、主人公が「テネット」をつくってニールを雇うというだけでも、映画が一本つくれる内容のためです。しかし、ノーラン監督は独立した物語をつくって、新しい世界に観客を引き込むことを好みます。また、「これまでつくった他の作品とは、全くつながりのないオリジナルのストーリーだ」と話していることからも、『TENET テネット』の世界はこれで見納めになるようにも思われます。監督は、物語を完成させるのに必要なすべての側面を観客に提示し、謎が残る部分については答えのない疑問として残しておくでしょう…観客自身に想像させることを好む監督ですから。

「テネット」を徹底解説

UNIVERSAL

 つまり、シーンや登場人物をつなぎ合わせるのは、私たち観客の役目というわけです。「ニールが実はキャットの息子であり、成長した未来に主人公に雇われるのではないか?」というような仮説も浮上します。ですが、そのような推測への付箋となるようなシーンも随所にありますが、それはノーラン監督が後々発見されるように作中に隠しておいたメッセージというよりは、答えの得られない疑問としてそのまま残すことになりそうです。

 中には、腹立たしく感じる方もいるかもしれません。「理解するまで、何回を観てやる…」とがんばる方もいるでしょう。ですがこの映画で、「なんだか、はっきりしないなぁ」という感覚の楽しさを味わってみてください。ストーリー展開や結末が予測できるような作品とは対照的に、それはそれで楽しいものです。

 映画内での物理学や、それに連動している時間系列が実に複雑怪奇でありながらも、結末に関してはストーリーをうまくまとめて締めくくるものになっていると言えるでしょう。最初の150分間で大騒ぎを繰り返し、その後は衝撃的というよりも、やっとひと息つけたような…満足によるため息が出る結末へと向かっていきますので。

 ですが、わりと几帳面に生きている方や現実主義の方にとっては、緩くつながった糸を固く結びつけたくなる…そんな心境になるかもしれません。

 『TENET テネット』の結末は、『インセプション』の回転するコマほどあいまいではありませんし、『ダンケルク』のトム・ハーディが最後に自分の戦闘機に火をつけたときほど、感動的なものでもありません。その代わりに、話の全体を理解できるように置かれたパズルの最後のピースのようなものと言えるでしょう。

 その観点から言えば、物語の核となるものが結末となった映画『メメント』に近い作品と言えるでしょう。通常の時間軸に沿って物語を伝えるのを好まないノーラン監督にとってこの作品の結末は、終着点ではなく、まだ先がありそうな通過点のように感じさせてくれるのです。

   

Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。

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