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すべては「平野と鍵浦」から始まった――「佐々木と宮野」春園ショウ、松岡禎丞、島﨑信長が語るリアルな空気感の理由 - コミックナタリー 特集・インタビュー - コミックナタリー

今年1月に全12話でアニメ化され、新作アニメの制作も決定している「佐々木と宮野」。女顔がコンプレックスの腐男子・宮野由美みやのよしかずと、宮野のことを気に入っている先輩・佐々木秀鳴ささきしゅうめいを中心とした男子高生たちの日常を描く“Boys Life”作品だ。4月27日には公式アンソロジーをリリース。7月27日には単行本9巻が発売予定となっており、その特装版にはTV未放送アニメを収録したOVAが付属する。また2021年9月に開催された朗読劇「佐々木と宮野」に続き、2022年7月10日には金髪で風紀委員の平野と、バスケ部で平野の後輩である鍵浦を中心に描くスピンオフ作品「平野と鍵浦」の朗読劇も行われる。

コミックナタリーではアニメ「佐々木と宮野」の特集を、2回にわたって展開。第2回では原作者の春園ショウ、平野大河役の松岡禎丞、鍵浦昭役の島﨑信長にインタビューを行った。「平野と鍵浦」の制作秘話、アニメで好きなエピソード、演じてみたい架空のシーンなど、自身の高校時代の話も交えて語り合ってもらった。

取材・文 / カニミソ

松岡さんの演技のおかげで、「平野と鍵浦」を連載したくなった(春園)

──「平野と鍵浦」は「佐々木と宮野」2巻に収録された描き下ろしエピソード「平野と後輩のちょっとした話。」がきっかけで、連載化に至ったと伺っています。ルームメイトである先輩の平野さんと後輩の鍵くんの日常をメインとした「平野と鍵浦」ですが、春園先生は連載するにあたり、どのように話を膨らませていったのでしょうか。

春園ショウ もともと「佐々木と宮野」の前に「平野と鍵浦」の小説を趣味で書いていて、ケータイサイトに投稿していたんです。佐々木と宮野は最初、平野さんと鍵くんが主人公の小説に登場するキャラクターだったんですよ。佐々木と宮野がくっつく話を形にしたいと思って、大人になってから描いたのが「佐々木と宮野」のマンガなんです。

島﨑信長 まず「平野と鍵浦」の小説があって、そこから「佐々木と宮野」のマンガが生まれた。ということはつまり、「佐々木と宮野」の原点は「平野と鍵浦」だと。

「佐々木と宮野」3巻より、「テレパシー。」。

春園 そうですね、「平野と鍵浦」からすべてが始まっています。なのでイチから膨らませたというよりは、遡って描いている感覚に近いかもしれません。「平野と鍵浦」は一度小説で完結させたお話でしたし、自分では満足していたんですけど、「佐々木と宮野」とは別に「平野と鍵浦」をもう一度最初から、マンガで描いてみたいと思うようになったのが、松岡さんの演技のおかげで。

松岡禎丞 おお!

春園 松岡さんには月刊コミックジーン(KADOKAWA)の付録として最初に作った「佐々木と宮野」のドラマCDから、平野役としてご出演いただいているのですが、その初詣のエピソードの中に「そうだな、何事も素直が一番だ」っていう平野さんのセリフがあって。その平野さんの言い回しがもう、脳内に相手を思い浮かべてそう言ってるように感じられて。私の中で平野さんの相手は鍵くんって決まっていたので、「絶対鍵くんのことを思い浮かべてる!」とめちゃくちゃテンションが上がり、そこから連載したいという思考回路になっていきました。

──松岡さんの演技に触発されて、創作意欲が沸いたと。

島﨑 すごいじゃない!

松岡 いやいや。当時はそこまで考えて演じてなかったとしても、うれしいです。ありがとうございます。

「結婚したい」っていうセリフがぶっ飛んでいて印象深かった(島﨑)

──春園先生には前回のインタビュー(参照:アニメ「佐々木と宮野」春園ショウ・白井悠介・斉藤壮馬が語る、もどかしいからこそリアルな“Boys Life”作品のススメ)で、「佐々木と宮野」から思い入れのあるエピソードをお伺いしましたが、今回は「平野と鍵浦」から思い入れのあるエピソードを教えてください。

「平野と鍵浦」第14話「先輩からのチョコ。」より。

春園 第2巻の描き下ろしエピソードですね。衝動のままに描いたお話ではあるんですけど、描きたいものが描けたなって思いますし、平野さんと鍵くんに再会できたお話という点でも思い入れが強いです。あとは直近で記憶に残っているのが、14話「先輩からのチョコ。」。14話は2人がすれ違ってしまうお話なので、描いていてすごくしんどくて、早く終わらせて15話を描きたい、14話を乗り越えたらあとはもうラブコメが待っている!ってずっと思いながら机に向かっていました(笑)。

──(笑)。松岡さんと島﨑さんは、原作「佐々木と宮野」「平野と鍵浦」で印象に残っているエピソードはなんですか?

松岡 「平野と鍵浦」1巻の第4話「大切にしているもの。」で、平野さんが鍵くんの誕生日プレゼントに、目覚まし時計とバスケの試合のチケットを用意するじゃないですか。バスケの試合は2人で一緒に観に行って、その帰り道に鍵くんが「平野さん、好き」って告白するんだけど、平野さんは完全にバスケのことだと思い込んで「ああ、俺も」って答える。あのシーンはこの2人の関係性をすごく表しているなと思いました。

島﨑 「バスケじゃないよ、君のことだよ!」って言いたくなるよね。

松岡 そう、あれだけ鍵くんが勇気を振り絞って言ったのに、「俺も」って同意したあと「また行こうぜ!」って軽い感じで受け流すから、鍵くんも「これってもしかして伝わってない?」ってすぐ状況を察して。声で録らせていただいたというのもありますけど、すごく面白いシーンでした。

「平野と鍵浦」第4話「大切にしているもの。」より。

島﨑 僕は禎丞より後から作品に参加させていただいたのですが、第2巻の描き下ろしエピソードのドラマCDが最初の収録だったんですよ。そこから始まったというのもあって、そのエピソードはすごく印象に残っていますし、中でも鍵くんの「結婚したい」っていうセリフがぶっ飛んでいて印象深かったです。同性であるとかルームメイトであることに悩まず、さらに付き合いたいとか抱きしめたいとかを通り越して、なかなか言わないじゃないですか、「結婚したい」って。そのギャップも面白いですし。しかも決してノリとか浮わついた気持ちで言っているんじゃないですよ。「あーー、結婚したい」って、本人のいないところでしみじみ言っているから、本気なんだなって。

──バスケの練習を休んでいる合間に、さらっと言ってましたね(笑)。

「佐々木と宮野」2巻の描き下ろし「平野と後輩のちょっとした話。」より。

島﨑 「結婚したい」って言葉が出てくるのはのちのち、家族が大切で両親みたいになりたいって思っているという鍵くんのバックボーンを知ることでわかってきますけど、初見はびっくりしますよね。でもこの、一生をともにしたいほど大好きなんだっていう彼の思いの強さは、最初から今に至るまでずっと僕の中でキーになっています。

松岡 覚悟決まってるよね。

──この「結婚したい」というセリフですが、春園先生的には鍵くんに言わせたかったセリフなのでしょうか。

春園 何も考えずにスルッと出てきました。1個下に弟がいるんですけど、テレビに好きな女優さんが映るたびによく「結婚したい」って言っていたんですよ。それでたぶん、男子高校生は「結婚したい」という単語がスルって出てくるものだと、私は思っているのかもしれないです。

島﨑 実話だった(笑)。

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