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進まない水道管の耐震化 鍵は自治体間の事業統合にアリ - 朝日新聞デジタル

 福島、宮城両県で最大震度6強を観測した3月の地震では、両県と岩手で最大約7万4千戸が断水した。多くは水道管の損傷が原因。東北6県の主要水道管は、継ぎ目がずれにくいなど耐震性がある管の割合「耐震適合率」が様々な事情から2~5割台にとどまる=表参照。老朽化した水道管の更新や耐震化は喫緊の課題で、専門家は水道事業の「広域化」が鍵だと話す。

 今回の地震で、福島県相馬市など3市町に給水する相馬地方広域水道企業団の管内では2万戸以上の断水被害が出た。主要水道管の耐震適合率は60・7%と県平均の56・3%を上回るが、耐震化していなかった水道管48カ所が破損したためだ。担当者は「財政的に厳しく、一気に耐震化を進めるのは難しい」という。

 福島県は東日本大震災でも水道管が損傷し、最大約42万戸が断水した。損傷した水道管の交換などで耐震適合率が上がり、2010年度より15・2ポイント向上。全国5番目の高さだ。ただ、耐震適合率を事業体別に見ると、福島市など全体の1割強が90%以上の一方、猪苗代町など5自治体が0%と格差が目立つ。

 宮城県は3月の地震で、大崎市など18市町の約3万7千戸が一時断水した。水道管の耐震適合率は46・4%で震災前からほぼ横ばいだ。

 県によると、震災の被害が大きい沿岸部は耐震化が進んだ。一方、配水池から各エリアに水を送る「配水本管」の更新事業は国の補助対象のため、水道事業体の判断でその先の「支管」を本管に格上げするケースがある。これで適合率の調査対象となる水道管の母数が増え、適合率が上がりにくいという。

 秋田県は東北6県で最低の24・7%で、全国でもワースト2位。県によると、水道の整備時期が昭和40~50年代中心で全国より遅かった。国の耐震化の補助対象は40年以上使った水道管のため、今後迎える更新期のピークに合わせて耐震化するという。「人口減で水道収入が減り、更新に国の補助があっても3分の1。順調に進むと思えない」

   ◇

 老朽化した水道施設の更新や耐震化は待ったなしの状況だ。だが水道収入は減り、料金値上げは反発が強い。東北は凍結対策で地中深くに水道管を敷くため、ただでさえ全国より料金が高い傾向にある。どうすればいいのか。

 「鍵は水道事業の広域化にある」と話すのは、近畿大経営学部の浦上拓也教授(公益事業論)。国は18年に水道法を改正し、水道事業の広域化を促した。取り組んだ自治体には浄水場などの施設更新費を補助する仕組みもある。自治体間で水道事業を連携・統合して経営の効率化を図るよう促すためだ。

 成功例の一つが岩手中部水道企業団だ。14年に岩手県北上市花巻市紫波町で事業をスタートさせた。中心になって進めたのが、当時は北上市職員だった菊池明敏さん(63)。発足の10年前に3市町の職員で研究会を立ち上げ、「このままでは水道事業が立ち行かない」と危機感を共有した。

 単独で事業を続ければ30年後、水道料金が2・5倍に膨らむ自治体もある――。こんな試算を首長や議会、住民に示し、抵抗された時は「子や孫に顔向けできますか?」の殺し文句で判断を迫った。統合後は一時的に料金値上げになった自治体もあったが、浄水場を9カ所廃止し、新設見送り分も含め少なくとも約90億円の経費を削減。耐震管も約27キロ分延びた。「耐震化100%だけが正解ではない。将来人がいなくなる地域は、漏水したら修理でしのぐという冷酷な判断も必要だ」

 浦上教授は「4年が任期の首長や議員にとって、50年先を見据えた水道事業の見直しは取り組みにくいかもしれない。だが、インフラ更新時期の今こそ、リーダーシップを発揮して進めるべきだ」と指摘。「漫然と施設を更新すると将来世代に負担を残すことになる。早めに事業統合や更新設備の見極めに着手すべきだ」と語る。(酒本友紀子)

東北6県の主要水道管の耐震適合率(%)

青森県  45.7

岩手県  48.1

宮城県  46.4

秋田県  24.7

山形県  43.0

福島県  56.3

全国平均 40.7

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