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「ひみつの本屋」人気のカギは町探検 熱海 鍵を探して入店「地域つながる拠点に」:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

観光客でにぎわうJR熱海駅前の商店街=いずれも静岡県熱海市で

観光客でにぎわうJR熱海駅前の商店街=いずれも静岡県熱海市で

 鍵を借りて錠前を開けると、書棚が並ぶ無人の空間。本を選んで買うもよし、数冊を外へ持ち出して読むもよし、誰にも邪魔されることはない。そんな常識破りの無人書店「ひみつの本屋」が、静岡県熱海市に登場した。商売として成り立つのかと心配したら、意外や人気を集めているらしい。自由で柔軟な発想が、昔ながらの温泉街の再生にも一役買っている。

 久しぶりにJR熱海駅の改札を出て、駅前の喧騒(けんそう)に目を奪われた。商店街は、食べ歩きを楽しむ若者や家族連れなどで押すな押すなのにぎわい。ご当地プリンや焼き芋スイーツの店には、長蛇の列ができている。

 「ひみつの本屋」は、そんな新しい風が吹き始めた温泉街の一角にある。元は映画館だったというビルの1階に、その存在を示す看板があった。横に木製の重厚な扉が。ところが立派な錠前が下がっており、このままでは開かない。どうすれば中に入れるのか。

路地にたたずむ「ひみつの本屋」

路地にたたずむ「ひみつの本屋」

自分で鍵を開け店内へ

自分で鍵を開け店内へ


 「面倒でも鍵を開けるプロセス自体を楽しんでほしいんです」と話すのはオーナーの田坂創一さん(33)、渡辺沙絵子さん(39)。2人の説明によると、仕組みはこんな具合だ。

 利用希望者は、まずウェブサイトで1日利用券(500円)を購入する。その上で鍵を探しに行く。鍵は近くのゲストハウス、スナック、バー、遊技場などに預けられており、初めての店を訪ねることになる。

 「この時点で小さな探検です。新しい出会いがあるかも」と田坂さん。鍵を受け取ったら、扉を開ける。

田坂創一さん(左)と渡辺沙絵子さんが運営する「ひみつの本屋」の店内

田坂創一さん(左)と渡辺沙絵子さんが運営する「ひみつの本屋」の店内

 店の中は4畳半ほどの広さで、洋館の書斎のような雰囲気。書棚に千冊を超える本が並んでいて、どれもが商品だ。時間をかけて選んだら代金は料金箱に入れる。1日に3冊までは外に持ち出すこともでき、鍵を返して利用終了となる。

 2021年6月のオープン以来、月平均30組ほどのお客さんが訪れ、本を買って行った。人件費がかからず、家賃も安いことから収支はとんとん。これまでにあったトラブルは鍵のかけ忘れ程度であるという。

 ところで、なぜ「ひみつの本屋」だったのか。

 田坂さんは建築家、渡辺さんはIT企業に勤務と、それぞれ都内で本業を持っている。しかし共通の関心が町づくり、町の再生で、熱海でも活動していた。

 「地域社会がつながる拠点として文化的な施設があった方がいい。文化といっても難しくなく、遊び心を持った本屋さんがいいと思った」と田坂さん。たまたま良い物件があるという情報があり、開店に踏み切ったのだという。

 「熱海」が持つ力も後押しをした。20年ほど前、温泉街には閑古鳥が鳴いていた。団体旅行に頼る従来型の観光客誘致から個人客へ。若い起業家たちがターゲットを切り替えたことで町は生まれ変わった。商店街の混雑ぶりはその賜物(たまもの)だ。

 「ひみつの本屋」の2軒隣にある喫茶「ボンネット」は1952年の創業。店主の増田博さん(94)は「谷崎潤一郎、越路吹雪、三島由紀夫なんて有名人が奥に陣取っていた時代もあったんだよ」と胸を張る。「掘り起こせばいくらでも魅力が湧き出てくる町。そんな町を楽しむための足場になってくれればいいんです」と田坂さんは話した。

<ひみつの本屋> 所在地は静岡県熱海市銀座町8-13。詳しい利用方法はウェブサイトやインスタグラム(店名で検索)から。

文・坂本充孝/写真・坂本亜由理

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