
「乗る時は緑、降りる時は黄色のカードリーダーにタッチしてください」。4月下旬、宇都宮市の宇都宮駅東口停留場で、次世代型路面電車(LRT)の車両を使って行われた乗り方教室。沿線の同市今泉、峰地区から、親子連れや高齢者ら約130人が訪れ、市職員の説明を熱心に聞いていた。
参加した市内の会社役員の男性(41)は「LRTが通れば街並みが変わる。宇都宮で車を使わない生活は難しいと思っていたが、沿線の商業施設に行く時などに乗ってみたい」と期待を寄せた。一方、芳賀町の企業に車で通勤する40歳代の男性は「道路が混む雨の日は使いたいが、普段は車と時間が変わらず、乗るかどうか分からない」と慎重だった。
市は2014年、有効回答数約3万4000世帯に上るアンケートを基に需要調査を行い、平日は1日約1万6000人が利用すると算出した。この数値は、沿線の商業開発などによる今後の需要増を見込んでおらず、LRTの整備方針を検討する「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」委員長の森本章倫・早稲田大教授(都市・交通計画)は「LRT効果を加味せず人口が減少する条件で算出するなど、相当厳しく出した数字」と解説する。関係者の間では、需要定着後の利用者数として、1万6000人を「最低ライン」と捉える向きもある。
芳賀町の工業団地に事業所が並び、沿線企業の中でも圧倒的な従業員数を抱えるホンダは、LRT開業を受け、1日約1200人が乗る宇都宮市からの通勤バスを8月末で廃止する。工業団地は製造業が多く、テレワーク実施企業が比較的少ない。需要調査の際、通勤需要が全体の8割以上を占めただけに、こうした事情は追い風だ。
一方、14年に沿線企業を対象に行われた従業員アンケートでは、全体の8割近い車通勤者のうち、LRTを「快速がなくても利用する」という人が10・5%、「快速があれば利用する」という人が8・6%にとどまった。車通勤者がどの程度LRTに乗り換えるかは不安材料となっている。
日中や休日の需要も課題となる。需要調査では、通勤、通学、業務以外の私用でLRTを利用する人は、全体の8%程度にとどまった。沿線には複合商業施設のウツノミヤテラスとベルモールがあるが、それ以外の停留場周辺は、ほかの地域から人を呼び込むような施設は少ないのが現状だ。
宇都宮市と芳賀町はLRTの利用を促すため、交通系ICカード「totra(トトラ)」を使えば、バスや乗り合いタクシーが割引される「乗り継ぎ割引制度」を導入。宇都宮市は通学に使う中高生世代に、芳賀町も町内全世帯にトトラを配布するなど、幅広い層への周知活動に取り組んでいる。
森本教授は「通勤需要を定着させるだけでなく、日中などのオフピーク需要を作り出すのも重要。新型コロナウイルスの影響など、開業してみないと分からない部分も多いので、開業後の動向に合わせて柔軟に需要喚起策を講じていくべきだ」としている。
◆整備と運行官民で分担 上下分離方式
宇都宮市―芳賀町間のLRTでは、自治体が軌道や車両を整備し、民間事業者が運行を担う「公設型上下分離方式」を採用した。2007年施行の「地域公共交通活性化再生法」で認められた方式だ。施設整備費は国・県・市町が負担。運行会社の宇都宮ライトレールは整備の初期投資がかからず、開業から4年で需要が定着する前提で、4年目から年間約1.5億円の黒字を見込む。人件費など開業前からの累積損失は、9年目で解消される見通しだ。
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