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かつては下請け扱い スタートアップ投資10兆円の鍵を握る大企業 - 日経ビジネスオンライン

かつては大企業がスタートアップを下請け扱いすることも少なくなかった両者の関係が、ようやく変わり始めた。長い閉塞感を打ち破る存在としてスタートアップへの期待は高まり、政府も協業に際して不平等な契約にならないようガイドラインを公表。「スタートアップ投資を5年で10兆円規模へ」とする岸田文雄首相の目標達成の鍵を握るのは大企業だ。

(写真:buritora/stock.adobe.com)

(写真:buritora/stock.adobe.com)

 「あれが協業と言えるのか。あんな悔しい思いは二度としたくない」

 50代のある起業家は、20年前の悔しさを今でも鮮明に覚えている。

 当時、消毒用アルコールなどの衛生用品の価格比較サイトを病院向けに提供していた。そこへ専門商社から出資の話が来て前向きに検討を開始。ところが、その契約内容を見て衝撃を受けた。

 「協業から生まれる知的財産権などは全て出資企業側に帰属する」との趣旨が書かれていたという。決められた期限内に上場できなければ出資金を専門商社に返す条項もあった。あまりに不平等な内容に、同氏は出資提案そのものを断った。

 日本でIT(情報技術)関連のスタートアップが続々と登場し、ドットコム・バブルが起きていた2000年前後のことだ。大企業が有望スタートアップに投資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の機運も高まり、一時的なブームになったがバブル崩壊とともにしぼんだ。投資された企業が下請けのように扱われるなどして建設的な協業関係に至る例が少なかったことが一因だ。

 その後、残ったCVCも08年のリーマン・ショックで打撃を受け、ほぼ休止状態となった。大企業内でCVCが傍流と見なされていたことも資金の打ち切りに拍車をかけた。「新産業を育成しなかったことが『失われた30年』を招いた」と成長企業支援のフォースタートアップスの志水雄一郎社長は指摘する。

 だが、そんな日本でもようやく風向きが変わり始めている。長い閉塞感を打ち破る存在として期待されるようになったからだ。

信頼されないCVCは締め出される

 米国でスタートアップ投資に関するノウハウが蓄積され、日本に持ち込まれるようになった。どのような出資条件なら対等と言えるのか、投資先の株式を何%程度取得するのが相場なのかといった「マニュアル」が業界内で蓄積されつつある。

 経済産業省も22年、スタートアップ投資に関するガイドラインを公表。スタートアップが大企業から一方的な契約上の取り決めを求められないよう、実際にあった不平等な契約事例とその法的な問題点、改善方法を整理した。

 起業家たちのコミュニティーが各地で形成されたことも環境改善を後押しする。スタートアップは会社をまたいだ横のつながりが強い。仮に、CVCが水面下で不平等な契約を押し付けようとすれば、「あの会社は危険だ」との噂が瞬く間に広まる。「信頼されないCVCはスタートアップ業界から締め出されるようになった」と日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の田島聡一会長は説明する。

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