「平岸を最強の街に！」タクシー会社の挑戦鍵は“リアルな触れあい” - nhk.or.jp

2022年12月2日（金）午後2時04分更新

マンションが立ち並ぶ札幌市豊平区の平岸地区。
札幌きっての住宅街のど真ん中に、昨年、およそ２００人を収容するライブハウスがオープンしました。
「ダルマホール」と名付けられたこの劇場。
ことし4月からは半年間、お笑いライブ「ＨＯＫＫＡＩＤＯ－１（Ｈ－１）グランプリ」が月１度、開催されました。
運営しているのは・・・どちらも札幌市内を走るタクシー会社。
“タクシー会社”と“エンタメ”・・・。一見、遠い存在のように思える両者を結びつけるものとは？

（札幌放送局　上松凜助）

まずは、
平岸を愛し、平岸に愛されたコンビ
Ｈ－１グランプリ　初代年間王者『36号線』が書き下ろした“平岸漫才”をどうぞ！

平岸にエンタメを

Ｈ－１グランプリの会場、ダルマホールでは昨年の開館以来、お笑いやジャズなど多種多様なライブを開催。
およそ１０年前までタクシーの格納庫として使われていた建物の２階部分をリフォームしました。

お笑いからジャズまで多様なライブがこのステージで開催される

「平岸ハイヤー」　神代晃嗣（くましろ・てるつぐ）社長
「昭和感が残るすごく良い雰囲気をなんとか生かせるもの、かつ地域の人が楽しんでもらえるものとは？と考え続けた結果、ホールとして平岸の皆さんにエンタメを提供しようと思いました」

およそ200万の人口を抱える札幌。
アーティストが芸を披露するライブハウスや劇場が少ないと感じていたと言います。
ミュージシャンを目指していた過去を持つ神代社長。
北海道で活動するお笑い芸人からネタを披露する場がほしいと要望を伝えられました。

こうして、ことし４月、Ｈ－１グランプリが立ち上がりました。
コンセプトは「北海道で一番面白い芸人を決める」。

神代社長
「勝負する場所があることで、（自分たちには）可能性があるんだと夢を見られるし、ダメならダメと諦めもつく。挑戦する、腕を磨ける場所を若手に提供したい」

４月の第１回から９月のチャンピオンシップ大会まで、プロ・アマ問わず、道内在住のお笑い芸人、のべ５０組以上が参戦。ダルマホールは毎回、満員御礼だったと言います。

“リアル”な触れあいという強み

挑戦は、ホールやお笑いライブにとどまりません。

リンゴ倉庫だった建物を改装したバー

会社敷地内にある、国の登録有形文化財である建物を改装した“バー”。
リンゴを保管するための倉庫として大正時代に建てられました。
バーテンダーには、過去に飲食店で働いていた経験を持つ現役のドライバーを起用しています。

現役ドライバーが店頭に

バーテンダーの杉谷さんです。
日中はドライバーとして活躍。夕方になるとバーテンダーへと身を転じます。
6年前にこのタクシー会社に入社する以前は、居酒屋など飲食店で働いていました。

杉谷さん
「入社当時は、まさか自分がもう一度、こうしてお酒をつくるとは全く想像していませんでした。バーを開店するときに、私が経験者ということで、もう候補に入っているよと言われて（笑）
じゃあぜひやりたいですと言って、こうしてやらせてもらっています」

ドライバーとバーテンダー、業務内容自体は異なるものの、仕事への向き合い方は共通するものがあると杉谷さんは話します。

杉谷さん
「どちらもお客さんと近い距離で相対することができます。
お客さんからは、車内でもバーでも、仕事の話から日々の個人的な悩みまでいろいろなお話を聞くことができるんです。
どちらの業務でも、お客さん1人1人に合わせたおもてなしで喜んでもらうことが一番です。
これは、過去の飲食店での経験から学んだことですし、どちらの業務にも共通する大事なことだと思います」